生理予定日を過ぎても生理がくる気配がないと、「もしかして……」と妊娠の可能性が頭をよぎるかもしれません。しかし、生理が遅れたり、こなくなる原因は妊娠以外にもあります。この記事では、生理がこないときに考えられる原因や、妊娠しているかどうかをチェックする方法、そして妊娠の初期症状を紹介します。
この記事の監修医師
産婦人科専門医 月花瑶子
北里大学医学部卒業。日本赤十字社医療センター、愛育病院での勤務を経て、現在は都内の不妊専門クリニックに勤務。産婦人科専門医の資格を持つ。臨床医として働きながら、生殖に関わるヘルスケアの知識を社会に広める啓蒙活動も行う。監修書籍「やさしく 正しい 妊活大事典」(プレジデント社)
生理がこないのは妊娠?
生理の仕組み
生理がこない理由や妊娠の可能性について理解するためにも、まずは「生理が来る仕組み」から説明します。
生理が来てから次の生理が来るまでの期間を「生理周期(月経周期)」と呼びます。生理周期の間には、女性ホルモンの量やバランスが適切に変化することで卵巣で卵子が発育し、排卵が起こったり、子宮内膜が厚く成長したりします。
妊娠すれば生理がこない
排卵後に妊娠しなかったときは厚く成長した子宮内膜の一部がはがれ落ち、このはがれ落ちた子宮内膜が血となって出てきます。これが「生理(月経)」です。
一方で、排卵後に妊娠したら受精卵は子宮内膜に着床します。そのため、子宮内膜がはがれ落ちることはなく、生理(月経)もこないのです。
ただし、生理がこないからといって、必ず妊娠しているわけではありません。
生理がこないときに考えられる3つの原因
生理がこなくても妊娠とは限らない
妊娠すると、生理はこなくなります。ただし、生理がこなくなる(または遅れる)原因は他にもあります。心当たりがないかチェックしてみましょう。
原因①ホルモンバランスの乱れ
ホルモンバランスが乱れると、生理が遅れることがあります。「生理がこないな……」と心配なときは、まずはホルモンバランスが乱れるような原因がないか振り返ってみましょう。
<ホルモンバランスの乱れの原因>
・精神的なストレス(学校や職場、プライベートの変化など)
・激しすぎる運動による身体的疲労
・急激なダイエット、体重変化
・睡眠不足 など
このような精神的または身体的なストレスなどが原因で、ホルモンバランスが崩れてしまうと生理が遅れたり、周期が乱れることがあるのです。
また、思春期や更年期はホルモンバランスに変化が起こるため、生理不順になりやすいことも覚えておきましょう。
原因②ホルモン分泌の異常などの疾患
生理が正常に起こるために必要な女性ホルモンを分泌する機能に異常がある可能性も考えられます。
なかには不妊症に繋がったり、骨折しやすくなる骨粗鬆症(こつそしょうしょう)に繋がったりすることもあるので、生理予定日から一週間以上遅れるような周期が頻繁にあるようであれば、一度婦人科で検査をしてもらいましょう。
原因③ピルの服用をやめた
避妊や月経困難症などの治療目的で低用量ピルを服用していた方が、ピルの服用をやめた後に生理不順になり、生理が遅れることがあります。それまでピルによってコントロールされていたホルモンバランスに変化が起こるためです。
妊娠しやすい「危険日」っていつ?
もしかして、危険日だった?
これまでに紹介した「生理がこないときに考えられる原因」に心当たりがなければ、やはり妊娠の可能性が頭をよぎるかもしれません。そして、「もしかして、危険日だった?」という不安も出てくるのではないでしょうか。
ところで、「危険日」とはいつのことなのでしょうか?
「危険日」は排卵が起こる日の前後数日間
排卵が起こる日(排卵日)の前後数日間は妊娠の可能性が高く、一般的には「危険日」と呼ばれています。
目安としては、排卵日前後の7日間程度(5日前から排卵日の翌日まで)が妊娠しやすい時期で、そのなかでも特に排卵日の3日前から前日までの3日間は妊娠の確率が高まります(*1)。
排卵日がいつか分からないとき
危険日の目安として排卵日を知ることは大切ですが、「いつだか分からない」という人も多いのではないでしょうか。
排卵日を知る方法はいくつかありますが、生理管理アプリを使えば手軽に知ることができます。
例えば、生理管理アプリのケアミーを使えば、生理日を記録すると「排卵日」が予測され、アプリを開けばカレンダーですぐに「排卵予定日」をチェックできます。
ケアミーは産婦人科医監修の安心できるアプリで、アプリ容量は軽く、また会員登録なしでも使いはじめられます。ぜひ一度、ダウンロードしてチェックしてみてください。
妊娠しているかどうかをチェックする方法
妊娠したかどうか判定できる「妊娠検査薬」
生理がこないときに考えられるいくつかの原因を紹介しましたが、妊娠しているかどうかは「妊娠検査薬」を使わないと判断できません。
妊娠検査薬はドラッグストアなどで販売されているスティック型の検査薬で、値段は800円程度です。ドラッグストアに行けば購入できます。
妊娠検査薬については「【比較解説】おすすめの妊娠検査薬8選!早期妊娠検査薬や海外製の解説付き」で紹介しているので、ぜひご覧ください。
妊娠検査薬の使い方
スティックの先に尿をかけ、尿中のホルモン数値を計ることで妊娠したかどうかを判定できます。検査の結果「陽性」となれば妊娠しているという判定ですし、「陰性」であれば妊娠していないという判定です。
なお、妊娠判定のために使用するタイミングとしては、多くの検査薬が「生理予定日の1週間後以降」を推奨しています。これは、生理予定日の1週間後を過ぎないと妊娠しているかどうかを判断するためのホルモンを検査薬が検知できないためです。
ただし、薬局で薬剤師から購入する早期妊娠検査薬を使用すれば、生理予定日に妊娠検査をすることも可能です。
妊娠検査薬の使い方は「【医師監修】妊娠検査薬の使い方は?タイミングはいつ?知っておくべきポイントを丁寧に解説」で詳しく解説しています。ぜひご覧ください。
「陽性」のときは産婦人科でより正確な検査を
妊娠検査薬で「陽性」と判定が出た場合は、産婦人科でより正確な検査を受けてください。市販の妊娠検査薬の正確性も100%ではないため、ときには判定が間違っていることもあります。
「陰性」であった場合は、ホルモンバランスの乱れから排卵が遅れ、そのために生理周期が乱れている可能性があります。もう少し様子をみて、もし生理が2週間以上遅れる、またはお腹が痛いといった症状がある場合は、子宮外妊娠などの異常妊娠の可能性がないか産婦人科を受診しましょう。
基礎体温グラフでも妊娠の兆しは分かる
普段から基礎体温を記録している方は、基礎体温グラフの変化から妊娠の兆しが分かることがあります。
正常に生理がある場合、基礎体温は「低温期」と「高温期」の二つに分かれます。生理周期の前半が低温期で、後半が高温期となり、その差は0.3℃~0.5℃程度が目安です。生理がくるタイミングでは、高温期の状態から体温が下がり、また低温期に戻ります。
一方で、もし妊娠していた場合は高温期の状態が維持されます。普段から基礎体温の記録をしている方は、生理周期後半のグラフが高温期のままかどうかチェックしてみましょう。
基礎体温の測り方は「【排卵日予測】基礎体温の測り方とグラフの見方を丁寧に解説」で詳しく説明しています。よければご覧ください。
妊娠していたらカラダに起こる初期症状
妊娠の初期症状とは
妊娠しているかどうか判断するには、妊娠検査薬や産婦人科での検査が大切です。しかし、自分自身のカラダに起こる変化(症状)から妊娠の兆候に気づくこともあります。
そのような症状を「妊娠超初期症状」や「妊娠初期症状」と呼びます。ただし、症状には個人差があるため、あくまで参考程度に知っておくとよいでしょう。
(※)「妊娠超初期」という言葉は医学的には存在しません。一般的に使われることがある俗語です。
妊娠の「超初期」と「初期」っていつのこと?
そもそも、「超初期」や「初期」とはどのタイミングのことを指すのか説明します。
妊娠超初期とは「妊娠0週〜4週」、妊娠初期は「妊娠5週〜15週」を指します。生理予定日を過ぎて妊娠が判明したタイミングは「妊娠4週」から「妊娠5週」になっていると考えられます。
「どうしてこんなに経っているの?」と驚くかもしれません。これは妊娠期間の数え方に由来します。
妊娠した月の生理が始まった日を「妊娠0週1日」と数えます。生理周期が28日の場合は生理が始まって14日目頃(妊娠2週)に排卵が起こり、受精した場合は約6日後に着床します。ですから着床したタイミングではすでに「妊娠3週」となるのです。
では、以下に妊娠の超初期、また初期のタイミングに見られる症状をリストアップします。
妊娠の超初期・初期症状一覧
・少量の出血(着床出血)
妊娠初期にはいつもの生理に比べると少量の出血が起こることがあります。これを「着床出血」や「月経様出血」と呼びます。
着床出血については「着床出血が出るのはいつ?時期や量など月経と見分けるポイントを解説」で紹介しています。
・吐き気
妊娠すると吐き気を催すようになることがあります。妊娠5週目〜6週目頃から始まり、妊娠8週目〜10週目頃にピークとなることが多いです。いわゆる、「つわり」です。
・食欲や味覚、嗅覚の変化
食欲が増したり、減ったり、また食の好みに変化が見られることがあります。また匂いのきつい食べ物を受け付けられなくなることもあります。
・眠気や体のだるさを感じる
妊娠すると女性ホルモンが増え、その影響で眠気や体のだるさを感じることがあります。
・イライラ、不安、落ち込みなど
生理前にイライラや不安、落ち込みを感じる方は少なくないと思いますが、妊娠初期にも症状として挙げられます。
・おりものの量が増える
着床後はエストロゲンという女性ホルモンの分泌が増えるます。その影響でおりものが増える傾向にあります。
妊娠とおりものの関係については「妊娠超初期はおりものが増える?生理前のおりものの変化について」で解説しています。
・微熱
排卵後、女性の基礎体温は「高温期」という少しだけ体温が高い状態が続き、妊娠しなければ基礎体温は下がります。妊娠した場合、初期の頃は「高温期」の状態がしばらく続くため、微熱を感じる方がいます。
・乳房の張りや乳首の痛み
生理前に胸の張りや乳首の痛みを感じる方がいますが、妊娠初期もこの症状があらわれることがあります。
・便秘、お腹の張りや腹痛
妊娠するとホルモンの影響で腸の動きが悪くなり、「便が硬い」「排便回数が減ってきた」「ガスが出やすい」などの症状が出ることがあります。また、子宮が収縮することによってお腹が張っているように感じたり、腹痛が起こることもあります。
・頭痛やめまい
妊娠すると、血管を拡げたり収縮させたりする自律神経の働きが不安定になります。そこで脳に血液が流れにくくなり、立ちくらみや頭痛が起こることもあります。いわゆる、「貧血」のような症状はこの自律神経の失調から起こります。
・腰痛
妊娠すると子宮が大きくなりはじめたり、子宮を支える靭帯が引き伸ばされたりして、腰に負担がかかることで腰痛が起こることがあります。
・頻尿
妊娠すると体内の水分量と共に循環する血液量が増えたり、少しずつ大きくなる子宮に膀胱が圧迫されることで、尿の量や回数が増加する傾向にあります。
・むくみ
妊娠すると、プロゲステロン(黄体ホルモン)が増加します。その影響で体に水分を溜め込みやすくなり、むくみやすくなります。
以上が、妊娠の超初期や初期に見られる症状です。ただし、どのような症状が出るかは人それぞれです。複数の症状がある人もいれば、ほとんど何も症状として出ない方もいるため、あくまで参考程度にしましょう。
以上、この記事では生理がこない(または遅れる)ときに考えられる原因や、妊娠しているかどうかのチェック方法などを紹介しました。妊娠の可能性に心当たりがあるのであれば、早めに妊娠検査薬で検査したり、産婦人科で妊娠判定の検査を受けるようにしましょう。