生理前におりものが増えたり、茶色いおりものが出ると「これって妊娠超初期症状?」と気になる方も多いのではないでしょうか。この記事では、生理前におりものはどのように変化するのか、そして、おりものと妊娠の関係について説明します。また、妊娠超初期症状の例など、妊娠しているかどうか判断するためのチェックポイントもご紹介します。
この記事の監修医師
産婦人科専門医 月花瑶子
北里大学医学部卒業。日本赤十字社医療センター、愛育病院での勤務を経て、現在は都内の不妊専門クリニックに勤務。産婦人科専門医の資格を持つ。臨床医として働きながら、生殖に関わるヘルスケアの知識を社会に広める啓蒙活動も行う。監修書籍「やさしく 正しい 妊活大事典」(プレジデント社)
生理前におりものが変化するのは妊娠のしるし?
生理前のおりもので妊娠の判断はできる?
結論からお伝えすると、生理前におりものの量が増えたり、茶色いおりものが出たときに、それだけで妊娠していると判断することはできません。あくまで「妊娠超初期症状の一つとしてあり得る」と考えるのが良いでしょう。以下で詳しく解説します。
おりものの量はホルモンバランスで変化している
妊娠に関わらず、おりものの量は変化します。これはホルモンバランスの影響を受けています。
生理周期の前半(卵胞期)はおりものの量は少ないです。
生理周期の中頃(排卵期)にかけて女性ホルモンの「卵胞ホルモン(エストロゲン)」の分泌が徐々に増えていくと、これに合わせておりものの量が増加します。
生理周期の後半(黄体期)、つまり生理前は「卵胞ホルモン(エストロゲン)」の量は減り、「黄体ホルモン(プロゲステロン)」の量が増えます。この変化を受けて、おりものの量は減っていきます。
このような、おりものの変化をまとめると以下のようになります。
<生理周期前半>
少量でサラサラとした無色透明のおりもの
<生理周期中頃>
量は増え、少しとろみがあり、指で触ると糸を引くように伸びる無色透明のおりもの
<生理周期後半>
量は減り、水分量が減ったように粘性が増し、透明度は下がって白く不透明なおりもの
妊娠すると変化するおりものの量
妊娠の超初期症状として「おりものが増える」と言われるのは、妊娠したときのホルモンバランスの変化が理由です。
妊娠すると、「卵胞ホルモン(エストロゲン)」の分泌に変化が起こります。妊娠しなかったときは、先ほどの図のように生理周期後半で「卵胞ホルモン(エストロゲン)」の分泌が減りますが、妊娠した場合は分泌が増加します。
そのため、おりものの量も減らずに、「いつもよりも多い」、「増えた」と感じることがあるのです。
おりものの量が増える =「妊娠した」ではない
ただし、ストレスなどの環境変化によるホルモンバランスの乱れや、その他の原因によっておりものが増えることもあるため、「おりものの量が増える」=「妊娠した」と判断できるわけではりません。
ですから、生理前におりものが増える理由の一つとして「妊娠も考えられる」という程度だと覚えておきましょう。
妊娠超初期症状として気になる「茶色いおりもの」
妊娠超初期症状の着床出血とは
妊娠超初期(*1)に見られる症状として「着床出血」があります。
着床出血とは、受精卵が子宮内膜に潜り込んで着床する際に、子宮内膜から出血することです(*2)。出血が起こることは病気などではないので心配はいりませんし、その後の妊娠の経過にも影響はありません。
着床出血は少量で、この血がおりものに混じると、おりものが薄いピンクや茶色に見えることがあります。
妊活をしている人たちの間では、これを妊娠超初期症状として「茶おり(茶色いおりもの)」と呼ばれることがありますが、それは着床出血の血が混じったおりもののことです。
着床出血は、生理予定日のおよそ1週間前から予定日までの間に起こり、数日間で止まります。ですから、妊娠の心当たりがあり、生理前の時期に茶色いおりものが出た場合は妊娠の可能性も考えられます。
「茶色いおりもの」=「着床出血」とは限らない
ただ、茶色いおりものが出る理由は着床出血だけではありません。着床出血は「不正出血」と呼ばれる、生理以外の理由で性器から出血が起こる現象の一つですが、不正出血は着床以外にも、ホルモンバランスの変化や病気が原因で起こります。
また、生理直前にはごく少量の経血がおりものに混じり、茶色いおりものが出ることもあります。ですから、おりものが茶色いからといって、着床出血が起こったとは断言できないのです。
妊娠しているか判断するには
おりものだけでは妊娠を判断できない
ここまで、生理前のおりものの増加や、茶色いおりものが出る理由を説明しました。どちらも妊娠の超初期症状の一つに挙げられますが、妊娠以外の理由でもそれらの変化は起こります。ですから、妊娠したかどうかをこれだけで判断することはできません。
妊娠したかどうかを自分で判断するには、やはり「妊娠検査薬」を使用するのが良いでしょう。
妊娠の判定は「妊娠検査薬」を使う
妊娠判定のために使用するタイミングとしては、多くの検査薬が「生理予定日の1週間後以降」を推奨しています。
これは、生理予定日の1週間後を過ぎないと妊娠しているかどうかを判断するためのホルモンを検査薬が検知できないためです。ただ、もっと早く知りたい場合、薬局で薬剤師から購入する早期妊娠検査薬を使用すれば、生理予定日に妊娠検査をすることも可能です。
陽性反応が出たら、「生理予定日だった日の2週間後」を目安に婦人科にいきましょう。
陰性判定なのに生理がこない場合は婦人科へ
もし、検査薬の判定が「陰性」なのに生理予定日から1週間以上経っても生理がこない場合は、念のため産婦人科での検査をお勧めします。検査薬の判定結果が間違っていたり、生理周期を乱す原因となる病気が考えられるからです。
妊娠超初期/初期症状の一覧
気になる妊娠超初期・初期症状
ここまで、おりものと妊娠の関係について紹介しました。この記事を読んでいる方は、おりもの以外の妊娠超初期・初期症状についても気になっているかと思います。
以下では、簡単に妊娠超初期・初期症状とはいつのことなのか、また、妊娠超初期・初期症状に起こる変化について紹介します。
妊娠超初期・初期っていつのこと?
そもそも、妊娠超初期・妊娠初期とは具体的にいつのことなのでしょうか。
妊娠超初期とは「妊娠0週〜4週」、妊娠初期は「妊娠5週〜15週」を指します。妊娠期間の数え方は、妊娠した月の生理が始まった日を「妊娠0週0日」と数えます。
生理周期が28日の場合は生理が始まって14日目頃(妊娠2週)に排卵が起こり、受精した場合は約6日後に着床します。ですから着床したタイミングではすでに「妊娠3週」となるのです。
このように妊娠期間を数えるため、生理予定日を過ぎ、妊娠検査薬などで妊娠が判明したタイミングは「妊娠4週」から「妊娠5週」になっていると考えられます。
妊娠超初期・初期に起こる変化
人によってかなり個人差がありますが、妊娠したら以下のような変化が見られることがあります。
・少量の出血(着床出血)
・吐き気
・食欲や味覚、嗅覚の変化
・眠気や体のだるさを感じる
・イライラ、不安、落ち込みなど
・微熱
・乳房の張りや乳首の痛み
・便秘、お腹の張りや腹痛
・頭痛やめまい
・腰痛
・頻尿
・むくみ
それぞれの症状についての詳しい解説は「【解説】妊娠したときの妊娠超初期・初期の症状一覧」をご覧ください。
PMSに似ている妊娠初期症状
生理前によく起こる症状と似ている
上記の症状リストを見て、生理前に起こる症状「PMS(月経前症候群)」と似ていると思った方もいるのではないでしょうか?
PMS(月経前症候群)は、生理が始まる前の数日間(3〜10日間程度)に身体的または精神的な症状がでることです。PMSは珍しいことではなく、生理がある女性の7〜8割程度は何かしらの症状があるといいます。
以下はPMSの症状ですが、上記の妊娠初期症状によく似ていることがわかります。
・精神的症状
情緒不安定、イライラ、抑うつ、不安感 など
・身体的症状
腹痛、頭痛、腰痛、むくみ、お腹や乳房の張り、眠気、睡眠障害、のぼせ・ほてり、食欲不振、過食、めまい、倦怠感 など
症状だけで妊娠を判断するのは難しい
このようにPMSの症状は妊娠超初期・初期症状と似ているため、体に起こる変化だけで妊娠しているかどうかを判断するのは難しいことが分かるかと思います。
また、先ほど列挙した妊娠の超初期や初期に見られる症状も、どのような症状が出るかは人それぞれです。そして、複数の症状がある人もいれば、ほとんど何も症状として出ない方もいます。
妊娠の可能性が考えられるのであれば、妊娠検査薬で確かめたり、産婦人科のクリニックで検査をすることが大切です。
以上、生理前のおりものの変化や、妊娠超初期症状について解説しました。妊娠したらカラダに起こる変化として、おりものが増えたり、茶色いおりものが出たりすることは考えられますが、それだけで「妊娠した」と判断できるものではありません。
他にも挙げた妊娠超初期・初期症状も、人によって症状の程度や有無は様々です。ですから、カラダの変化はあくまで「妊娠の可能性を示す兆候」として考えましょう。