妊活をはじめると、妊娠しやすい日を予測するために「排卵日」を意識する人が多いかと思います。排卵日の目安は「次の生理予定日」の14日前を計算することで分かるのですが、最も妊娠しやすいのは「排卵日の当日」というわけではありません。この記事では、排卵日を生理周期から計算する方法、そして妊娠する確率が高い日がいつなのか解説します。
この記事の監修医師
産婦人科専門医 月花瑶子
北里大学医学部卒業。日本赤十字社医療センター、愛育病院での勤務を経て、現在は都内の不妊専門クリニックに勤務。産婦人科専門医の資格を持つ。臨床医として働きながら、生殖に関わるヘルスケアの知識を社会に広める啓蒙活動も行う。監修書籍「やさしく 正しい 妊活大事典」(プレジデント社)
排卵日を生理周期から計算する方法
次の生理予定日の14日前が目安
ホルモンバランスの乱れや生理(月経)に関する異常がなく、正常に生理がくる女性の場合、排卵が起こった日の約14日後に生理がはじまります(*1)。
ですから、逆にいえば、次の生理予定日の14日前頃がおおよその「排卵日」と考えられます。
「14日前頃」と少し曖昧な表現をしている理由は、ホルモンバランスや体調によって多少のズレが起こるからです。また、生理周期の長さによっても変わり、例えば生理周期が32日など少し長めであれば16日前頃だったり、生理周期が25日など短めであれば13日前頃だったりします。
このように、その周期のコンディションや生理周期の長さによってもバラつきはあるので、あくまで参考程度に計算するのが良いでしょう。
排卵日の計算方法
具体的な、排卵日の計算方法をご紹介します。
例えば、生理周期が28日で、今回の生理開始日が1月1日だとします。すると次回の生理予定日は1月29日ですから、排卵日の目安は1月29日−14日前=1月15日頃と計算できます。
カレンダーで見るときは、「次の生理予定日のちょうど2週間前頃」と覚えておくと早いかもしれません。
このようにして、排卵日の目安は生理周期から計算することができます。
便利な排卵日計算カレンダー
「前回の生理開始日」と平均的な生理周期の日数を入力すれば、排卵予定日や妊娠の可能性が高い期間を計算してくれる「排卵日計算カレンダー」をご紹介します。
ぜひ一度、試しに計算してみてください。
前回の生理開始日
生理周期の日数
生理が開始した日から、次の生理が来るまでにかかる平均的な日数を入力してください。排卵日を予測してくれるアプリ
なかには、前回の生理開始日や平均的な生理周期の長さを覚えていないという人もいると思います。
そんな人は生理管理アプリを使ってみてください。たとえば、生理管理アプリのケアミーを使えば、生理日を記録しておくだけで排卵しそうな日(排卵予定日)が表示されます。
アプリを開けばすぐにカレンダーが表示され、パッとチェックできるので計算する必要もありません。(※上の画像内のカレンダーで薄い緑の丸がついている日付が計算された排卵予定日)
ケアミーは産婦人科医監修の安心できるアプリで、アプリ容量は軽く、また会員登録なしでも使いはじめられます。ぜひ一度、ダウンロードしてチェックしてみてください。
より正確に排卵日を予測する方法
基礎体温と排卵検査薬
さて、生理周期から計算する方法でもある程度は排卵日を予測できますが、より正確に排卵日を予測する方法を紹介します。
それは「基礎体温の計測」と「排卵検査薬(排卵日検査薬)」です。
基礎体温で排卵日を予測する方法
基礎体温を計測して排卵日を予測する方法を「オギノ式」と呼びます。排卵の前後では女性ホルモンのバランスが変化するのですが、それによって基礎体温も変化します。
「オギノ式」では、毎日同じ時間に基礎体温を計測することで、その変化から「おそらくこの辺りが排卵期間だろう」と予測します。
詳しい内容はこちらの記事「【排卵日予測】基礎体温の測り方とグラフの見方を丁寧に解説」で解説していますので、良ければご一読ください。
排卵検査薬は排卵日前のタイミングがわかる
排卵検査薬は自宅でできる尿検査キットのようなもので、ドラッグストアなどで購入できます。排卵検査薬を使うと、排卵の前に放出されるホルモンを検知して排卵日を予測することができます。
排卵検査薬で陽性反応が出ると、それから約40時間以内に排卵が起こるとされています(検査薬によって多少のバラつきがあります)。
詳しい内容はこちらの記事「【排卵日予測】排卵検査薬はいつから使うの?正しい使い方を解説」で解説していますので、良ければご一読ください。
特に妊娠しやすいのはいつ?
妊娠する確率が高いのは「排卵日の2日前」
排卵日の目安が分かったら、次は妊娠しやすいタイミングで性交することが大切です。
多くの方は、卵子と精子が出会って受精するには「排卵日の当日」に性交した方が良いように思うかもしれません。しかし、実は妊娠する確率が高いのは「排卵日の2日前の性交」ということが研究によって分かっています(*2)。
このグラフは上記の研究よって発表されたデータで、排卵日前後の妊娠率を年齢別で表したものです。グラフの横軸の数字は排卵日を「0」としたときの前後の日数を表しています(「-1」は排卵日の前日を表しています)。
年齢によって排卵日前後の妊娠率は異なりますが、どの年齢でも「排卵日の2日前(グラフ横軸「-2」)」の性交がもっとも妊娠率が高いことが分かります。排卵日の2日前に続いて排卵日の前日、排卵日の3日前、4日前の順で妊娠の確率が高くなっています。つまり、妊娠の確率が高い期間は「排卵日の前の4日間」だといえます。
妊娠率が高いと誤解されがちな「排卵日の当日」の妊娠率は、どの年齢でも10%程度です。排卵日の当日よりも、排卵日前の4日間の方が妊娠する確率は高いのです。
排卵前のほうが妊娠率が高い理由
まだ卵子が排卵されていないタイミングなのに、どうして妊娠できるの?と驚いた方もいるかもしれません。実は、腟内で射精された精子は、3〜5日間は卵子の排卵を待ち伏せすることができます。ですから、性交は排卵日の当日である必要はないのです。
また、排卵日の前に性交をした方が妊娠率が高い理由には「頸管粘液(けいかんねんえき)」も関係しています。
頸管粘液とは腟と子宮をつなぐ「頸管」から分泌される粘液で、排卵日の2日前ごろになると粘度が下がり、量も増え、糸を引くような性状になり、腟から子宮へと精子が通過しやすい状態になります。このタイミングで射精された精子は、粘度の下がった頸管粘液に助けられて卵子と出会いやすくなるのです。
以上、この記事では排卵日を生理周期から計算する方法や妊娠しやすい日について解説しました。妊娠の可能性を高めるには「タイミング」が大切です。より妊娠の可能性が高いタイミングを知るためにも、最後にご紹介した基礎体温を測って予測する方法や、排卵検査薬を上手く活用しながら、妊活を進めてくださいね。
参考文献
(*1)日本産婦人科医会 女性の健康Q&A 「月経について教えて下さい。」,https://www.jaog.or.jp/qa/youth/%E6%9C%88%E7%B5%8C%E3%81%AB%E3%81%A4%E3%81%84%E3%81%A6%E6%95%99%E3%81%88%E3%81%A6%E4%B8%8B%E3%81%95%E3%81%84%E3%80%82/
(*2) DavidB.Dunson,etal.,HumanReproduction,2002,Changes with age in the level and duration of fertility in the menstrual cycle,https://academic.oup.com/humrep/article/17/5/1399/845579