おりものの臭いで悩む方は少なくありません。やや酸っぱい臭いがする程度であれば心配はありませんが、違和感を感じるほどの悪臭がする場合は感染症や、婦人科系の病気が隠れている可能性があります。この記事では、おりものの臭いの原因と対処法を解説します。
この記事の監修医師
産婦人科専門医 月花瑶子
北里大学医学部卒業。日本赤十字社医療センター、愛育病院での勤務を経て、現在は都内の不妊専門クリニックに勤務。産婦人科専門医の資格を持つ。臨床医として働きながら、生殖に関わるヘルスケアの知識を社会に広める啓蒙活動も行う。監修書籍「やさしく 正しい 妊活大事典」(プレジデント社)
おりものの臭いのもとは「善玉の乳酸菌」
臭いの原因は「善玉の乳酸菌」
おりものには「乳酸桿菌(にゅうさんかんきん)」と呼ばれる善玉の乳酸菌が含まれていて、この乳酸菌によって腟内は酸性に保たれ、細菌が侵入したり増えたりするのを防いでいます。
おりものは無臭であることもあれば、この腟内を酸性に保つ乳酸菌が原因で、やや酸っぱい臭いがすることがあります。
おりものの状態には個人差がある
おりものの状態は個人差はありますが、一般的には少し粘り気のある液体で、色は無色透明かやや白みがかっています。
下着についたおりものがやや黄色く見えることはありますが、これはおりものが乾燥することによって変色したものなので心配はいりません。
おりものの臭いが気になるときのチェックポイント
おりものが臭いが気になる場合、もしかすると「細菌性膣炎(さいきんせいちつえん)」と呼ばれる腟の炎症かもしれません。以下のような「細菌性膣炎」を引き起こす原因が考えらないかチェックしましょう。
原因①体調不調・疲れやストレスが溜まっていないか
体調不良や疲れ、ストレスが溜まっていると腟内の自浄作用(細菌の侵入や増殖を防ぐ働き)が弱まり、「細菌性膣炎」を引き起こすきっかけになります。このような炎症が原因でキツイ臭いが発生することがあります。
勉強や部活、仕事などで疲労が溜まっていないか、ストレスを感じていないか振り返ってみましょう。
もし心当たりがあれば、十分な睡眠をとって体と心を休ませたり、自分に合ったストレス解消法を見つけてリフレッシュするように意識してください。
臭いの原因②下着や生理ナプキンでムレていないか
デリケートゾーンがムレた状態だと、腟内細菌の増殖に繋がる可能性があります。通気性の良い下着や、生理中はナプキンをこまめに交換するなどして清潔に保つように心がけましょう。
臭いの原因③デリケートゾーンの洗いすぎ
デリケートゾーンを清潔に保つことは大切ですが、腟内を過剰に洗うと自浄作用をもつ乳酸桿菌が洗い流されてしまい、逆に細菌の増殖を引き起こしてしまうことがあります。
臭いが気になる場合は、弱酸性のデリケートゾーン用石鹸を使うなど試してみましょう。
違和感を感じるほどの悪臭がする場合
生臭い悪臭がする「腟トリコモナス症」
腟トリコモナス症は性感染症のひとつです。感染すると、おりものは生臭い悪臭がするだけでなく、色が黄色や黄緑色、または淡い灰色になり、性質が泡状になることが特徴です。また、性器に痒みや痛みを感じたり、性交痛などの症状が見られます。
浴場や便器、内診台などから感染することもあり、感染経路が性交渉だけではないことが特徴のひとつで(*1)、女性の場合、感染後5日から1ヶ月の間に発症します。
症状に心あたりがあれば、婦人科で診てもらいましょう。
おりものの量が増え、悪臭がする淋病(りんびょう)
淋病(淋菌感染症)も性感染症のひとつです。感染した場合は性交から数日後に発症します。
感染後、おりものの量が増え、悪臭がするようになるのが特徴の一つです。また、おりものの色が黄色くなることもあります。その他、女性器の痒み、不正出血、排尿痛、尿道から膿が出る、発熱、下腹部痛などの症状が見られます。
これらの症状に心あたりがあれば、婦人科で診てもらいましょう。
子宮頸がん
上記で紹介した腟の炎症や性感染症と比べると稀(まれ)ではありますが、念のため子宮頸がんについても紹介しておきます。
子宮頸がんは性交時に感染するヒトパピローマウイルス(HPV)に感染した結果として発生するものです。がんと言えば高齢者の病気のように思いますが、子宮頸がんは若い女性にも発症することがあります。
子宮頸がんが進行して悪化しているとおりものが悪臭を放つことがあります。その他の症状としては不正出血や性交後の出血などがあります。
ただし、あまり症状が出ず自覚症状がないこともあるため、子宮頸がんは定期的に検診でチェックすることが大切です。
おりものの色や量の異常にも注意
おりものの臭いに異常があるときに考えられる病気を説明しましたが、臭い以外にも病気が原因で色や性質、量に変化が起こることがあります。
おりものの色や性質の異常については「おりものの色や性質に異常を感じるときのチェックポイント」で解説しています。
また、おりものの量が異常に多くなったという方は「おりものが多いと何かの病気?量が変化する理由や病気の可能性について」をご覧ください。
以上、臭いの原因や悪臭がするときの病気の可能性について解説しました。女性ホルモンの分泌によって変化が起こるおりものは、健康状態を示すバロメーターでもあります。
「やや酸っぱい臭いがする」程度であれば問題ありませんが、悪臭を放っていたり、ご紹介したように色や量などに異変を感じたら、早めに婦人科のクリニックに相談をすることを勧めます。