排卵日を予測できる排卵検査薬は便利ですが、生理周期のいつから使い始めるのが良いのでしょうか?この記事では、排卵検査薬の使い方を正しく理解するために、排卵検査薬の仕組みや使いはじめるタイミング、注意点などを丁寧に解説します。
この記事の監修医師
産婦人科専門医 月花瑶子
北里大学医学部卒業。日本赤十字社医療センター、愛育病院での勤務を経て、現在は都内の不妊専門クリニックに勤務。産婦人科専門医の資格を持つ。臨床医として働きながら、生殖に関わるヘルスケアの知識を社会に広める啓蒙活動も行う。監修書籍「やさしく 正しい 妊活大事典」(プレジデント社)
排卵検査薬とは
排卵が起こる直前のタイミングがわかる
排卵検査薬(排卵日予測検査薬)は排卵のタイミングを予測できるスティック型の薬品です。自宅用の尿検査キットのようなもので、排卵の直前に放出される「黄体化ホルモン」を検知できます。
黄体化ホルモンは「LH」とも呼ばれ、排卵が起こる直前には「LHサージ」というLHの分泌量が急激に高まるタイミング(下図)があります。このLHの分泌量の変化を検知することで排卵日を予測します。
「陽性反応 = 2日以内に排卵」の可能性が高い
排卵は、排卵検査薬で陽性反応が出てから40時間以内に起こると考えてよいでしょう。
排卵は LHサージが始まってから35〜44時間後に起きると考えられおり(*1)、市販の排卵検査薬はLHが30〜40mIU/mlを超えると陽性を示すことが多いです。排卵検査薬で陽性反応が出てから2日以内に排卵が起こる確率は91.1%という調査もあります(*2)。
排卵検査薬はドラッグストアやECサイトで購入できる
排卵検査薬は「第1類医薬品」で、ドラッグストアやECサイトで購入できます。
国内製と海外製の輸入品があり、輸入品の方が比較的安く手に入ります。初めて排卵検査薬を使う方は、国内製を使うのがおすすめです。国内製のほうが説明書が分かりやすく、使い勝手も輸入品に比べて良いためです。使い方に慣れてきたら価格の安い輸入品に切り替える方もいます。
国内メーカーの排卵検査薬としては、以下がメジャーです。
・ハイテスターH(タケダ)
・ドゥーテストLH II(ロート)
・チェックワンLH・II(アラクス)
・クリアブルー(オムロン)
排卵検査薬の選び方や比較表は「おすすめの排卵検査薬10選!分かりやすい比較表付き(国内製・海外製)」で紹介しています。是非ご覧ください。
排卵検査薬を使うメリット
排卵前のタイミングが分かる
排卵検査薬を使うメリットは、手軽さに加えて「排卵前に妊娠しやすいタイミングがわかる」ことです。
自分で排卵日を予測するには「基礎体温を測ってグラフ化する方法」もありますが、妊娠しやすいタイミングがつかめるのは次の生理周期以降です。基礎体温による排卵日予測は、基礎体温が低温相(低温期)から高温相(高温期)に変化する「排卵が“起こった”サイン」を確認するものです。
基礎体温で排卵日を予測するには、低温相から高温相に変化する時期をつかみ、翌周期以降で妊娠しやすいタイミングを狙う必要があります。
一方、排卵検査薬は排卵前のホルモンの変化を検知するので、「これから排卵が起こるサイン」を把握できます。妊娠の可能性が高いのは排卵日前の数日間とされています(*3)。排卵が起こる前に妊娠しやすいタイミングが分かるのは排卵検査薬のメリットでしょう。
排卵検査薬を使うタイミングはいつ?
排卵検査薬は排卵前のホルモン変化を検知するものですから、排卵後に使っても意味がありません。いつから使えば良いのでしょうか?
排卵検査薬を使いはじめる目安は「次の生理予定日の17日前」
排卵検査薬を使いはじめるタイミングは「次の生理予定日の17日前」が目安です。次の生理予定日の17日前から数日間に渡って排卵検査薬を使うことで検査結果が「陰性」から「陽性」に変化するタイミング(= LHサージが起こるタイミング)が分かります。このようにして排卵する直前のタイミングを把握できます。
「次の生理予定日の17日前」の理由
では、なぜ「次の生理予定日の17日前」なのでしょうか?
それは、「次の生理予定日の14日前」が排卵日の目安として考えられているからです。ホルモンバランスの乱れや月経異常などがない場合、排卵日の約14日後に生理が始まります(*4)。
逆算すれば「次の生理予定日の14日前頃」がおおよその排卵日と考えられるため、そこから数日間さかのぼった「17日前」が排卵検査薬を使い始める目安になっているのです。
生理不順で「次の生理予定日」が分からないときは?
毎回のように生理予定日がずれるという方は、「次の生理予定日の17日前から」と言われても困るかもしれません。そのような方は、直近の2~3周期の中で最も短かった生理周期の日数をもとに「次の生理予定日」を予測し、その日付から「17日前」を計算してください。
排卵検査薬の使い方と判定結果の見方
陰性から陽性に変化したタイミング = 妊娠のチャンス
排卵検査薬は、「次の生理予定日の17日前」にあたる日から毎日同時刻に、1日1本(または2本)使用します。検査結果の「陰性」から「陽性」への変化を見て、排卵直前のタイミングを正確に把握するためです。
排卵検査薬を毎日使うと、黄体ホルモン(LH)の量によって「陽性・陰性」を示す判定ラインの色の濃さが徐々に変化します。判定ラインが見えない状態から、薄くラインが現れ、排卵直前にラインが濃くなってから、再び薄くなっていきます。
妊娠の確率が高いのは排卵日の3日前〜前日ということが医学的に明らかになっています(*3)。判定ラインで「陽性」が出たら、なるべく早く性交の機会を持つことが大切です。
最初のうちは、判定ラインの色が最も濃くなる(LHサージのピーク)がいつなのか判断しづらいかもしれません。検査結果は判定ラインの部分を写真で残しておくとよいでしょう。
排卵検査薬を使う直前の注意点
多くの排卵検査薬が、使用前の注意点として以下の3つを挙げています。
1)検査前は4時間程度、排尿を避ける
2)検査前に過度に水分を摂らないようにする
3)検査前は多量の発汗を伴う運動をしないようにする
これからは、検査薬が尿中のホルモン数値を正確に検知するために気をつけたい注意点です。
製品によってホルモン検知の感度が異なる
また、妊娠検査薬によっては陽性反応が出る基準が異なることも覚えておきましょう。一般的に、海外からの輸入品は陽性を示すLHの濃度が低く(20mIU/ml)、国内品は高い(30~40mIU/ml)傾向にあります。輸入品の方が陽性反応が早く出る可能性は高くなります。
検査結果が「 いつも陽性」「いつも陰性」の場合は要注意
常に陽性、または陰性の場合は医師に相談を
陽性反応が出る基準は違いますが、輸入品も国内品でも、検査結果の「陰性」と「陽性」は区別できます。陽性反応や陰性反応が出続ける方は、LHの分泌に異常がある可能性があります。何周期も続いて「常に陰性」「常に陽性」が出る場合は、産婦人科や不妊専門クリニックで医師に相談してください。
例えば、卵胞が発育するのに時間がかかり排卵が起こらない「多嚢胞性卵巣症候群」の場合、LHの分泌が通常よりも多いため常に陽性とでる可能性が高いです。こうした疾患は不妊の原因にもなります。
排卵検査薬を使っても予測ができない可能性があるケース
また、以下のようなケースでは排卵検査薬を使用しても排卵日を予測できないことがあるのでご注意ください。
・不妊治療をしている
不妊治療中は、投与するホルモン剤の影響などで排卵検査薬が正常に反応しないことがあります。不妊治療中の方は、排卵検査薬の使用については医師に相談するようにしましょう。
・すでに1年以上の妊活をしているが妊娠していない
基礎体温を測ったりしながら、すでに1年以上妊活をしているにも関わらず妊娠していない場合、不妊原因となる疾患がある可能性が考えられます。排卵検査薬の使用の前に、不妊専門クリニックで一度相談をしてみるのも良いかもしれません。
・極端な生理不順、または経血量が多いなどの月経異常がある
周期ごとの日数が7日以上ずれるような生理不順や、生理中は1時間おきにナプキンを交換しないといけないぐらいの経血量がでる場合は月経異常と考えられます。このようなケースでは女性ホルモンの分泌などに異常があり、不妊の原因が隠れているかもしれません。ですから、心配な方は産婦人科で相談をしましょう。
以上、排卵検査薬をいつから使うべきか、また使い方のポイントや注意点を解説しました。妊娠の確率を高めるには「タイミング」がとても大切です。うまく排卵検査薬を活用して、妊娠の可能性が高まる「排卵日直前」を狙い撃ちできるように頑張ってくださいね。