温泉旅行や海・プールなどに遊びに行く予定を立てるとき、気になるのは「生理予定日と重ならないか」ですよね。また、学生の方だと部活の試合や受験・テストなどの日が生理と重ならないか不安になることもあるのではないでしょうか。実は、生理は「ピル」の服用によって遅らせたり早めたりすることができます。この記事では、生理をずらす方法について説明します。
この記事の監修医師
産婦人科専門医 月花瑶子
北里大学医学部卒業。日本赤十字社医療センター、愛育病院での勤務を経て、現在は都内の不妊専門クリニックに勤務。産婦人科専門医の資格を持つ。臨床医として働きながら、生殖に関わるヘルスケアの知識を社会に広める啓蒙活動も行う。監修書籍「やさしく 正しい 妊活大事典」(プレジデント社)
生理は遅らせたり早めたりできる
生理が来る日はピルでコントロールできる
生理のタイミングは遅らせたり早めたりすることは可能です。婦人科で処方してもらう「ピル」の服用によって生理日をコントロールすることができます。
ピルの服用によって生理日をずらす方法を理解するために、まずは生理の仕組みについて簡単に説明します。
生理の仕組み
生理がきてから次の生理が来るまでの期間を「月経周期(生理周期)」と呼びます。
月経周期の間には女性ホルモンの量やバランスが適切に変化することで卵巣で卵子が発育し、排卵が起こったり、子宮内膜が厚く成長したりします。
排卵後に妊娠しなかったときは厚く成長した子宮内膜の一部が剥がれ落ち、この剥がれ落ちた子宮内膜が血となって出てきます。これを「月経(生理)」と呼びます。
ピルで生理日をコントロールできる理由
では、なぜピルを服用すると生理日をずらすことができるのでしょうか。
ピルを服用すると女性ホルモンの量を調整できるので、卵巣の働きや子宮内膜の成長をコントロールでき、結果として生理がくる日をずらすことができるという仕組みです。
生理をずらす方法は二つある
生理をずらす方法は、「生理を遅らせる」「生理を早める」の二つの選択肢があります。続いての段落で、それぞれの方法を詳しく説明します。
生理を遅らせる方法
生理予定日の数日前からピルを服用し続ける
生理を遅らせたい場合は、生理がはじまりそうな数日前からピルを飲み続けます。
ピルを飲み続けている間は生理は来ず、ピルを飲むのをやめると2、3日後に生理が来ます。そのため、生理が来てほしくない期間の最終日までピルを飲み続けることになります。
生理を遅らせるときの服用スケジュール
例えば、「8月15日に来そうな生理を、8月20日にずらしたい」という場合、ピルの服用スケジュールの例は以下の通りです。
生理が来そうな日 :8月15日
生理が来て欲しくない期間:8月14日〜8月18日
ピルを服用する期間 :8月10日〜8月18日
生理がくる日 :8月20日頃
服用期間中に副作用が出ることもあるので注意
生理を遅らせる場合は、生理が来て欲しくない期間中にピルを服用し続ける必要があります。ピルは人によっては副作用が出ることもあるため、旅行や受験に支障が出るのが心配な方は、生理を早める方法を選んだ方が良いかもしれません。
生理を早める方法
一つ前の生理期間中からピルを服用する
生理を早めるには、「生理をずらしたい期間」の一つ前の生理期間中からピルを飲み始める必要があります。
そして数日間に渡ってピルを服用し、服用をやめると2、3日後にいつもよりも経血量の少ない生理が来ます。こうして、生理を早めることができます。
生理を早めるときの服用スケジュール
先ほど使用したスケジュールの図を使って紹介します。例えば、8月15日頃に来そうな生理を10日間早める場合、ピルの服用スケジュールの例は以下の通りです。
生理が来そうな日 :8月15日
生理が来て欲しくない期間:8月14日〜8月18日
その前の生理期間 :7月17日〜7月21日
ピルを服用する期間 :7月19日〜8月3日頃まで
生理がくる日 :8月5日頃
服用期間中に副作用が出る心配がないのがメリット
このように、前の生理期間中の3日目頃から10〜14日間程度ピルを服用し、服用をやめたタイミングで生理を起こすことができます。この場合は生理が来て欲しくない期間中にピルを飲む必要がないため、予定の間に副作用が起こる心配もありません。
スケジュールに余裕を持ってピルを服用する必要があるのがネックですが、もし先の予定が数ヶ月前から分かっているのであれば、生理を早める方が良いかもしれません。
ピルを処方してもらうには
ピルはどこで処方してもらえる?
ピルは婦人科のクリニックで処方してもらえます。Webで「婦人科 + お住まいのエリア」や「月経移動」、「ピル外来」などのキーワードで検索すると、ピルを処方してくれる婦人科クリニックの情報を得られるはずです。
クリニックでの処方の流れは?
クリニックでは、ピルの処方の前に問診が行われます。
問診では、服用のリスクを判断するため、喫煙の習慣があるかどうかや、過去に婦人科系の疾患にかかったことがあるかどうかなどを質問されます。
問診に加え、必要に応じて採血を実施したり、ピルの服用方法についての説明を受けたりして、ピルを処方してもらえます。
ピルの値段は?保険は適用されるの?
生理を遅らせる、または早めるためのピルの処方は保険適用外なので、クリニックによって費用は異なります。かかる費用の相場は4000円〜5000円程度です。
ピルの服用中にでることがある副作用
ピルといえば「副作用がある」と聞いたことがある方もいるかもしれません。ピルの服用期間中は、軽度ではありますが以下のような副作用がでることがあります。
・胸の張り
・むくみ
・頭痛
・胃のむかつきや吐き気
血栓症のリスクは正しく服用すれば大丈夫
また、稀に「血栓症」という血管内に血の塊ができて血管が詰まってしまう症状が起こることがあります。しかし、ピルを医師の指示に従って正しく服用すれば血栓症のリスクは回避できますので安心してください。
なお、喫煙者は血栓症など副作用のリスクが高いのでピルを処方してもらうことはできません。
ピルの副作用に関してはこちらの記事「ピルって大丈夫?ピルの副作用について医師が丁寧に解説」で詳しく解説していますので、ぜひご覧ください。
タンポンや月経カップという選択肢もある
漏れが気になるならタンポンや月経カップは手段の一つ
ここまで説明した「ピルで生理をずらす方法」は、生理中の腹痛などの症状や、生理前の精神的・身体的なつらい症状で悩んでいる方には効果的です。
ただし、特にそのような症状には困ってなく、経血の漏れの心配をどうにかしたい程度という方は、タンポンや月経カップは手段の一つです。
入浴や水泳も大丈夫!
タンポンや月経カップは使用したことがない方もいるかもしれませんが、水泳や温泉など水中に入ることもできるので、「旅行と生理が重なってしまう」という場合には、ピルではなくてタンポンや月経カップで対処することができます。
詳しくは「生理中は温泉やプール・海に入れる?注意事項や対処法を解説」で解説しているので、よければご覧ください。
以上、ピルによって生理を遅らせる、または早める方法について紹介しました。
生理はピルによってコントロールが可能です。ピルと聞くと「避妊のための薬」のイメージが強いかもしれませんが、女性が生理とうまく付き合っていくために活用できる薬でもあります。楽しいイベントや大切な予定がある日をベストコンディションで過ごすためにも、うまくピルを活用してくださいね。