「避妊をせずにセックスしてしまった」、「コンドームが破れてしまった」など避妊のトラブルがあると不安になりますよね。妊娠の可能性が考えられる性交(セックス)をしてしまった後の緊急避妊法として「緊急避妊薬(アフターピル)」があります。この記事では、万が一のときに正しく対処できるよう、緊急避妊薬(アフターピル)の効果や処方してもらう方法を解説します。
この記事の監修医師
産婦人科専門医 月花瑶子
北里大学医学部卒業。日本赤十字社医療センター、愛育病院での勤務を経て、現在は都内の不妊専門クリニックに勤務。産婦人科専門医の資格を持つ。臨床医として働きながら、生殖に関わるヘルスケアの知識を社会に広める啓蒙活動も行う。監修書籍「やさしく 正しい 妊活大事典」(プレジデント社)
緊急避妊薬「アフターピル」とは
緊急避妊薬「アフターピル」
避妊が失敗したと考えられる性交をしてしまったときの緊急的な対処法を緊急避妊法といいます。そして、性交後の妊娠を防ぐために服用する薬を「緊急避妊薬(アフターピル)」と呼びます。
72時間以内の服用が大切
アフターピルが処方されるケースとしては、避妊をせずに性交してしまったケース、コンドームが破れていた、外れていたなど避妊の努力はしたものの不十分だったケースなどが典型的ですが、中には同意のない性交、レイプなどの性被害に遭ってしまったケースもあります。
そのようなときは、「避妊に失敗した……」「妊娠してしまったかもしれない……」と大きな不安に襲われるかもしれませんが、性交から72時間以内にアフターピルを服用すれば、妊娠の可能性を可能な限り回避することができます。
アフターピルの種類
アフターピルには大きく二つの種類があります。
・ヤッペ法(中用量ピル)
・ノルレボ(レボノルゲストレルという黄体ホルモン剤)
以前はヤッペ法によって緊急避妊が行われていましたが、2011年にノルレボが承認されて以降、今ではヤッペ法と比べて副作用が少ないノルレボが主流になっています。
アフターピルの妊娠を防ぐ仕組み
妊娠を防ぐ仕組みについては、アフターピル(ノルレボ)のいくつかの効果が考えられています。
主には卵子を包む卵胞の成長や排卵を抑制することができるからではないかと考えられており(*1)、また、それらに加えて着床を阻害する効果もあるのではないかと考えられています。
腟内で射精された精子は3〜5日間は生き残り、卵子が排卵するタイミングと重なれば受精する可能性があります。ノルレボを服用することで、卵子の排卵を抑制できるため、精子が卵子と出会う可能性を下げることが期待できるのです。
アフターピルを処方してもらうには
アフターピルの処方はなるべく早めに婦人科へ
避妊に失敗したと思ったら、性交後なるべく早めにアフターピルを処方している婦人科に行ってください。
アフターピルの効果は、服用のタイミングが早ければ早いほど高いからです。性交後72時間以内に服用することが理想ですが、もし72時間を過ぎていても医師に相談しましょう。状況に合わせて適切な対処を指示してもらえます。
事前にアフターピルの処方が可能か調べよう
婦人科によってはアフターピルの処方に対応していない病院もあります。ですから、処方を希望する場合は先にインターネットなどでアフターピルの処方をしているか調べましょう。病院によっては、アフターピルの処方は予約が必要なこともあります。
未成年でもアフターピルの処方は可能
アフターピルは未成年であっても処方は可能です。保護者の同席や同意書は必要のない病院が多いですが、中には同意書を求められるケースもあります。未成年の方は、アフターピルの処方が可能かどうか調べる際に、同意書が必要かどうかも併せて確認しましょう。
アフターピル処方時の診察内容や費用
病院では、まずは問診が行われます。問診では以下のような内容を質問されますので、答えられるように準備しておくとスムーズです。
・最後に生理(月経)が来た日と経血が出ていた期間
・生理周期(生理が来てから、次の生理が来るまでにかかる日数)
・避妊に失敗したと思われる性交があった日時とその際の避妊方法
・その性交以前に性交した日時とその際の避妊方法
問診後は、状況に合わせて薬の説明や服用方法が指示されます。
アフターピルは保険適用外ですから、保険証は必要ありません。費用は病院によって異なりますが、目安は1万円〜2万円程度です。
アフターピルの注意点
1)副作用が出ることがある
アフターピルの副作用は、以下が挙げられます。
・吐き気(胸のむかつき)
・少量の出血、月経の乱れ
・頭痛
・倦怠感
・眠気
たまに吐き気を感じる方がいますが、実際に嘔吐するケースは稀です。ただし、服用後2時間以内に嘔吐してしまった場合は、薬の効果が発揮されないため再度受診するようにしましょう。
アフターピルの服用後、生理(月経)とは関係なく少量の出血が起こることがあります。また、いつもの生理予定日から数日ずれることもあります。出血があったり、生理日がずれたりしても薬の効果が無かった訳ではありませんので心配はありません。
その他、頭痛や倦怠感、眠気などを感じる方もいます。
2)必ず妊娠を防げる訳ではない
アフターピルを服用したからといって、100%の確率で妊娠を防げる訳ではありません。服用したタイミングですでに受精していたり、着床しているとアフターピルの効果が発揮されないことがあります。
服用後、生理(月経)が予定より 7 日以上遅れたり、あるいはいつもよりも軽い場合には、妊娠検査を受けるようにしてください。
3)アフターピルの服用ができない方
問診の際に質問される内容ですが、以下のような方はアフターピルを服用することができません。
・アフターピルの成分に対して過敏症の方
・重篤な肝障害のある方
・妊婦
ただし、上記に当てはまり、アフターピルの服用ができないかもしれない場合でも、まずは一度産婦人科を受診して相談をしてみましょう。
以上、緊急避妊薬「アフターピル」について解説しました。望まぬ妊娠を防ぐためにも、避妊に失敗したと思ったら早めに対処することが大切です。不安な気持ちでいっぱいかもしれませんが、アフターピルを処方しているお近くの病院に相談しましょう。