女性は基礎体温を記録することで、妊娠しやすい期間を予測できます。妊活を始めたばかりの方は「そもそも基礎体温って?」「どうやって測るの?」「グラフをどう見たらいいの?」など、たくさんの疑問があるのではないでしょうか。この記事では、基礎体温の測り方やグラフの見方を丁寧に解説します。
この記事の監修医師
産婦人科専門医 月花瑶子
北里大学医学部卒業。日本赤十字社医療センター、愛育病院での勤務を経て、現在は都内の不妊専門クリニックに勤務。産婦人科専門医の資格を持つ。臨床医として働きながら、生殖に関わるヘルスケアの知識を社会に広める啓蒙活動も行う。監修書籍「やさしく 正しい 妊活大事典」(プレジデント社)
基礎体温とは
基礎体温は「必要最低限のエネルギーを消費しているとき」の体温のこと
基礎体温を一言で表すなら、「生命を維持するために必要最低限のエネルギーしか消費していないとき」の体温だといえます。通常の「体温」は、運動、食事、感情の起伏、基礎代謝などの影響を受けて変化しますが、基礎体温は基礎代謝だけを反映した体温のことを指します。
ですから、基礎体温を計測するときは、1日のうち最も安静な状態のとき……つまり、十分な睡眠を取った翌朝に、目覚めてすぐ計測する必要があります。また、通常の体温計ではなく、「婦人体温計」という専用の機器を使用します。
妊活と基礎体温の関係
基礎体温を測ると、なぜ妊活に役立つのでしょうか? それは、基礎体温の変化によって妊娠しやすいタイミングを予測できるからです。
基礎体温を毎日測り、その変化をグラフ化すると、生理周期に合わせて基礎体温が上下することがわかります。生理周期の前半に訪れる基礎体温が低い期間を「低温期」、後半に訪れる基礎体温が高い時期を「高温期」といいます。
「低温期」が「高温期」に変化するタイミングが排卵期にあたります。基礎体温を測り続けると、いつ頃に排卵が起こっているのか予測できるのです。この予測法を「オギノ式」といいます。
排卵日を予測するための基礎体温の測り方
基礎体温は婦人体温計を使う
基礎体温の計測は、熱が出たときに使う体温計ではなく、婦人体温計を使用します。婦人体温計はインターネットや家電量販店、ドラッグストアなどで販売されています。
計測するときの注意点
基礎体温は以下の点に気をつけて測ります。
(1)目覚めた直後、立ち上がる前に計測する
(2)毎日同時刻に計測する
(3)十分な睡眠を取る(4〜5時間以上)
(4)同じ環境で計測する
基礎体温の計測に適しているのは「目覚めた直後」です。婦人体温計をベッドや布団の横に置いてから寝るようにし、目覚めたら立ち上がる前に計測してください。
毎日同じ環境で計測する
基礎体温の変化を正確に記録するためにも、なるべく毎日同時刻に計測すること、睡眠を十分にとることを心がけましょう。基礎体温は計測する時間帯によって変化します。また、基礎体温は体調や睡眠環境の影響を受けることを覚えておいてください。例えば、前日にたくさんお酒を飲んだり、寝ている間に布団がはだけて身体が冷えていたりすると、基礎体温がいつもよりも高かったり低かったりすることがあります。
基礎体温は毎日、同じ環境で計測することを心がけましょう。そして、基礎体温がいつもと異なる変化をしていて、思い当たる理由があるのならば、参考にしない方が良いでしょう。
基礎体温を測りはじめるタイミングはいつでも構いませんが、生理の始まった日から計測をスタートすることをおすすめします。基礎体温から排卵期を予測するためには、「生理が始まった日」から「次の生理が始まった日」までの1サイクル以上のデータが必要です。生理が始まった日から計測を始めると、グラフが見やすくなります。次に基礎体温のグラフの見方について説明します。
基礎体温のグラフ(基礎体温表)の見方
計測した基礎体温はグラフ化する
測った基礎体温を記録して、温度の変化を折れ線グラフにしてみましょう。グラフを作る方法としては、ドラッグストアなどで販売されている「基礎体温の記録ノート」を使うか、生理周期管理アプリの基礎体温を記録する機能を活用する方が多いです。
基礎体温は「低温期」と「高温期」の二つに分かれます。低温期と高温期の差は0.3℃~0.5℃程度が目安です。
生理周期が28日の人の場合、生理が始まってから約14日間が基礎体温の低い「低温期」です。この期間は、卵巣の中で卵子が排卵の準備をしたり、子宮内膜が厚く成長したりしています。
そして、生理開始から14日目前後で基礎体温が大きく下がる日(体温陥落日)があり、それから1~3日かけて基礎体温が高くなっていきます。基礎体温が低温期の平均的なよりも0.3℃以上高くなった時点から「高温期」に入ります。
基礎体温が「二相性を示す」=「排卵のサイン」
基礎体温は、なぜ低温相から高温相へと変化するのでしょう?
生理周期の中で、低温相から高温相に変化する期間を「排卵期」と呼びます。排卵はその期間に行われます。基礎体温の変化は排卵が起こっているサインなのです。
排卵期は数日間続きます。基礎体温の変化によって、具体的にいつが排卵日かを特定することはできません。基礎体温と排卵日の関係を調査した研究でも、排卵が起こるタイミングは基礎体温が下がる「体温陥落日」、「低温相の最終日」、「高温相の初日」など、人によって様々でした(*2)。
あくまで基礎体温が「低温相」から「高温相」に変化するタイミングのどこかで排卵が起こっていると考えておきましょう。
基礎体温による排卵日予測の注意点
排卵のサインに気づいた頃には「妊娠しやすい日」を逃している
基礎体温を測りはじめた月から、妊娠の確率が高い期間を狙い撃ちすることはできません。研究によれば、妊娠の確率が高いのは排卵日前の4日間だということが明らかになっています(*3)。
ということは、排卵が起こったサインが確認できる高温期に入った時点で「妊娠しやすいタイミング」を逃してしまっているのです。ですから、基礎体温のグラフを毎月作成することで、高温期に入るタイミングをもとに排卵日の目処を立てることができるようになります。
排卵日を予測するために必要な2つの条件
基礎体温で排卵日を予測するためには、以下の2つの条件が必要です。
(1)低温相と高温相の二相がはっきりと区別できること
低温相と高温相がきれいな二相に分かれず、高温期がいつから始まったか分からないケースもよくあります。基礎体温は体調や睡眠環境によって影響を受けます。
生活リズムや基礎体温の測り方によっては、グラフの形がガタガタで低温相と高温相の区別ができないことがあります。基礎体温から排卵日を予測するのであれば、この記事で紹介したポイントを守り、毎日正確な基礎体温を測りましょう。
(2)生理周期の日数が毎月一定であること
排卵日の予測には、基礎体温に加えて生理周期が一定である必要があります。次の生理周期の排卵日を予測できたとしても、月によって生理周期が異なると、排卵日の予測にズレが生じてしまうからです。
排卵日の目安は「次の生理予定日の約14日前」といわれますが(*4)、生理周期が28日と32日とでは排卵日の予測が4日もズレてしまいます。
排卵検査薬を使うのもオススメ
このように、基礎体温によって排卵日を予測するためには、(1)低温相と高温相の二相がはっきり区別できること、(2)生理周期が毎月一定であること、の2つの条件を満たす必要があります。
「基礎体温で排卵日を予測するのが難しそう……」という方は、排卵検査薬も試してみてはいかがでしょうか。
排卵検査薬は自宅用の尿検査キットのようなもので、排卵の前に放出されるホルモン(LHサージ)を検知して排卵のタイミングを予測できます。排卵検査薬を使った排卵日の予測方法についてはこちらの記事「【排卵日予測】排卵検査薬はいつから使うの?タイミングや使い方の解説」で詳しく解説していますので、ぜひご一読ください。
まとめ
この記事では基礎体温の測り方やグラフの見方について解説しました。
・基礎体温は十分な睡眠を取った翌朝、目覚めてすぐに計測する
・基礎体温は「低温相(低温期)」と「高温相(高温期)」の二相に分かれ、その間の期間が「排卵期」
・基礎体温だけで予測が難しい場合は、排卵検査薬も使う方法もある
排卵日の予測は妊娠の確率を高めるキーとなります。正しく基礎体温を測り、排卵検査薬も活用しながら取り組んでみてくださいね。