「生理が終わったばかりなのに、もう?」生理が予定日よりも早くくると、不安に思う方もいるのではないでしょうか。もしかすると、それは生理周期が短い「頻発月経(ひんぱつげっけい)」かもしれません。頻発月経はストレスだけでなく、何らかの疾患が原因なこともあります。この記事では頻発月経かどうか判断するポイントや原因、また病院にいく目安について解説します。
この記事の監修医師
産婦人科専門医 月花瑶子
北里大学医学部卒業。日本赤十字社医療センター、愛育病院での勤務を経て、現在は都内の不妊専門クリニックに勤務。産婦人科専門医の資格を持つ。臨床医として働きながら、生殖に関わるヘルスケアの知識を社会に広める啓蒙活動も行う。監修書籍「やさしく 正しい 妊活大事典」(プレジデント社)
生理が月に2回くるのは大丈夫?
生理が月に2回くることはある
「今月、また生理がきた……」と、月に2回も生理がくると心配になるかもしれません。ただし、もし生理周期の長さが26日であれば月に2回生理がくることになるので、「生理が月に2回くるのは病気」ということではありません。
ただ、もっと早いペースで生理がくるのであれば心配した方が良いこともあります。まずは、医学的にどれほどのペースで生理がきたら「生理がくるのが早い」と判断するのか、目安を紹介します。
生理周期が25日よりも短いかどうか
生理が始まった日から次の生理が始まる日の前日までの期間のことを生理周期と呼びます。例えば、1月1日に生理が始まり、次の生理が1月29日に来たのであれば、生理周期は28日となります。
生理周期の日数は平均的に28日で、正常と言える生理周期の目安は25日〜38日と幅があります。生理周期が25日でも正常ですし、38日でも正常と判断します。
ただし、生理周期が25日よりも短いと「生理がくるのが早い」と言えます。
生理がくるのが早い「頻発月経」とは
生理周期が25日よりも短い場合は注意
生理周期の日数が25日よりも短く、次の生理が早くくる状態を「頻発月経(ひんぱつげっけい)」といいます。
頻発月経は貧血に繋がったり、妊娠のために必要な女性ホルモンの分泌に異常があったりするため、治療が必要なケースがあります。
たまに生理が早くくるのは問題ありませんが、毎回のように生理周期が短い方は少し注意が必要です。
思春期や更年期によくみられる症状
初潮から間もない思春期や、閉経前の更年期などは頻発月経になることがあるため大きな心配はありません。妊娠を希望しているわけではなく、貧血などの症状もないのであれば特に治療も必要ありません。
しかし20代や30代で頻発月経の症状が見られる場合、特に妊娠を希望している場合は、妊娠に関わるホルモン分泌に異常などが原因となっているため注意が必要です。
以下では、頻発月経の原因や症状、そしてチェックポイントを解説します。
頻発月経の原因とチェックポイント
原因1. 無排卵周期症(無排卵月経)
<症状>
頻発月経の原因の一つは「無排卵周期症(無排卵月経)」です。
通常、生理が終わったあとの「卵胞期」には、卵子を包む卵胞を育てるために「エストロゲン」というホルモンが分泌されます。しかし無排卵周期症の場合は、このエストロゲンの分泌が不十分で、正常に卵胞が育たずに卵子が排卵されません。
エストロゲンの分泌が不十分だと卵胞を育てている期間(卵胞期)が通常よりも短くなるため、生理周期が短くなり頻発月経となるのです。
卵子は排卵されなくても、経血は少量ではありますが数日間にわたって出てきます。ですから、自分では気づきにくい疾患です。
<自分でチェックする方法>
生理がくるのが早く、頻発月経の心配がある人は基礎体温を測ってチェックすると良いでしょう。
基礎体温を計測・記録すると、ホルモン分泌が正常であれば体温が低めな期間の「低温相」と体温が少し高めな期間の「高温相」の二相に分かれます。
ただし、無排卵周期症であれば体温差が無く、体温がほぼ一定であるのが特徴です。基礎体温を測ってみて、「低温相」と「高温相」の二相に分かれているかどうがチェックしてみましょう。
原因2.黄体機能不全
<症状>
頻発月経のもう一つの原因は「黄体機能不全」です。
通常、排卵後には黄体と呼ばれる組織から子宮内膜を成熟させるための「黄体ホルモン」が分泌される期間があり、これを「黄体期」と呼びます。
黄体機能不全とは、この黄体がうまく機能せずに、子宮内膜の成熟が起こらない症状を指します。「黄体期」の期間が短くなるため、生理周期が短くなり頻発月経となります。
黄体機能不全は子宮内膜の成熟が不十分になる疾患なので、受精卵が着床しなかったり、着床しても育たなかったりするため、不妊の原因にもなります。
<自分でチェックする方法>
黄体機能不全の疑いがないかどうかは基礎体温を測ってグラフにして見ることでチェックできます。グラフの形を見てみて、以下のような状態であれば黄体機能不全の疑いがあります。
- 低温相と高温相の体温差が0.3℃未満である
- 高温相の期間が10日よりも短い(正常では14日程度)
- 高温相の期間中に体温が低下するときがある
ちなみに、正常な基礎体温グラフは以下のような特徴があります。
基礎体温グラフからホルモン分泌の異常をチェックする方法は「基礎体温がガタガタなときにチェックすべき4つのポイント」で詳しく解説しています。ぜひご覧ください。
原因3.ストレスや急激なダイエット、肥満
頻発月経の原因として、疾患以外に考えられるのはストレスや急激なダイエット・肥満です。
生理不順の原因として「ストレス」というのは多くの方が聞いたことがあるのではないでしょうか。生理には女性ホルモンの分泌が大きく影響していますが、ストレスはホルモン分泌の量を左右します。環境の変化によってストレスがかかり、頻発月経が起こることもあります。
また、急激なダイエットや体重増加もホルモンの分泌に影響を及ぼすので、生理周期が不安定になることがあります。痩せすぎや太りすぎは、卵巣機能の低下や無排卵周期症に繋がることがあります。
病院にいく目安と頻発月経の治療法
病院に行く目安
・すぐには妊娠を希望していない方の場合
生理周期が25日より短くても、必ず治療しないといけないわけではありません。日常生活に支障がなければ、様子をみても大丈夫です。もし貧血の症状があれば、病院で検査を受け、薬を処方してもらいましょう。
・妊娠を希望している方の場合
生理周期が25日より短い周期が何度も続くようであれば婦人科の受診を考えましょう。頻発月経の原因として、不妊症につながる「無排卵周期症」や「黄体機能不全」の可能性が考えられるため、早めに病院で検査を受けるようにしてください。
病院での検査内容や治療法
婦人科での検査内容は主に3つです。
- 基礎体温を記録し、正常な体温変化が起こっているか
- 血液検査によってホルモンの値に問題はないか
- 超音波検査によって子宮・子宮内膜・卵巣に問題はないか
そして検査の結果、頻発月経の原因である「無排卵周期症」や「黄体機能不全」と診断された場合は治療を行います。
すぐには妊娠を望まない場合
すぐには妊娠を望まない場合は、ホルモン治療やピル・薬の処方によって生理周期を整えます。
また、内診で子宮・子宮内膜・卵巣などに異常がなく、ストレスなど生活習慣が原因と疑われる場合には、生活習慣の改善を試みながら経過観察をすることもあります。
生理がくるペースが早いと、貧血を起こしやすくなります。鉄分を意識してとるようにして貧血対策もしておくと良いでしょう。鉄分はレバーや赤身の肉、大豆製品などに多く含まれています。また、ビタミンCは鉄の吸収を高めるため意識的に摂取するようにしましょう。
すぐにでも妊娠を望んでいる場合
もし、すぐにでも妊娠を望んでいる場合は次のような治療を行います。
・無排卵周期症の場合
排卵を誘発する薬の投与(飲み薬や注射)によって、卵胞が育ち卵子が排卵されるようにします。
・黄体機能不全の場合
排卵後の子宮内膜の成熟や着床維持をサポートするためのホルモン治療(飲み薬や注射)を行います。
生理ではなく不正出血の可能性もある
不正出血とは
ここまで頻発月経の解説をしましたが、生理予定日よりも早く出血があったときは不正出血の可能性もあります。
生理と異なるタイミングで性器から出血することを「不正出血(不正性器出血)」といいますが、大きく以下の2種類に分けられます。
1)機能性出血:ホルモンの分泌の乱れが原因の出血
2)器質性出血:子宮や腟の器質的な疾患が原因の出血
不正出血があったときに、その不正出血が「機能性出血」なのか「器質性出血」を自分で判別することは難しいです。
ただ、どちらにせよ「何周期も不正出血がある」「1週間以上も出血し続ける」「出血量が生理のときよりも多い」などであれば、早めに病院で診察を受けてください。
不正出血の原因として、子宮や腟などの器質的な疾患が隠れている可能性もあります。
不正出血については「不正出血の原因は?ストレスのせい?不正出血の種類と病院に行く目安」で詳しく解説しています。よければ、あわせてご覧ください。
以上、生理がくるのが早い「頻発月経」について解説しました。
最初にお伝えしたように、生理は女性のカラダの健康を示すバロメーターのようなものです。「生理が早くくるな」と思ったらそれは「頻発月経」かもしれません。そして、頻発月経の原因となる無排卵周期症や黄体機能不全という不妊に繋がる症状が隠れているかもしれません。
妊娠を希望している場合は特に、生理周期の短さに不安を覚えたら婦人科にかかることをお勧めします。