不妊で悩む夫婦は少なくありません。妊娠しない原因は女性だけでなく、実は男性にもあることを知っていますか?この記事では、男女別の不妊原因をまとめて紹介します。
この記事の監修医師
産婦人科専門医 月花瑶子
北里大学医学部卒業。日本赤十字社医療センター、愛育病院での勤務を経て、現在は都内の不妊専門クリニックに勤務。産婦人科専門医の資格を持つ。臨床医として働きながら、生殖に関わるヘルスケアの知識を社会に広める啓蒙活動も行う。監修書籍「やさしく 正しい 妊活大事典」(プレジデント社)
不妊の原因は女性だけでなく男性にもある
妊娠は女性の問題と思われがちですが、そんなことはありません。実は、不妊の約半数は男性にも原因があります。WHOが発表した「不妊症の夫婦のうちどちらに原因があるか」というデータをご覧ください。
男女二人で検査を受け、不妊の原因をチェックすることが大切です。
なお、検査を受けても「原因不明」という結果が出ることもあります。これは「原因がないのに不妊症」ということではなく、検査だけでは不妊の原因を特定できないケースです。
このような場合は、タイミング法、人工授精、体外受精、顕微受精……と、治療法をステップアップしながら妊娠を目指します(「ステップアップ治療」)。治療の過程で、不妊の原因を特定していきます。
ここからは、男女別の不妊原因を見ていきましょう。
女性の不妊原因とは
まずは、女性側の不妊原因をご紹介します。
不妊基本検査(不妊スクリーニング検査)で特定される不妊の原因は、以下が挙げられます。
・排卵因子
排卵が起こらなかったり、排卵が遅かったりする状態のことです。卵子の成長や排卵は、脳の「視床下部」や「下垂体」と呼ばれる器官が女性ホルモンの分泌をコントロールする指示が出すことで起こります。この機能に異常があると排卵障害を引き起こすことがあります。
・卵管因子
卵管の異常に起因した不妊のことです。「卵管」とは、卵巣から排卵された卵子が子宮へと移動する間に通る管です。主にクラミジア感染や子宮内膜症を原因として、卵管が狭くなったり閉じてしまったりすることがあります。
・子宮因子
受精卵が着床する場所(「子宮内膜」)や、子宮に起因する不妊のことです。原因としては、子宮の形態異常や子宮筋腫、子宮内膜ポリープといった腫瘍など様々です。
・子宮頸管因子
子宮頸管は、腟と子宮をつなぐ部分のことです。そこから分泌される粘液に異常があることを指します。具体的には、精子を攻撃してしまう抗体(「抗精子抗体」)が含まれている場合などを指します。
女性の不妊原因をまとめると、以下の通りです。
・「精子が子宮内に入る」部分の異常(子宮頸管因子)
・「卵子を育てて排卵する」部分の異常(排卵因子)
・「排卵された卵子が子宮に移動する」部分の異常(卵管因子)
・「受精卵が着床する」部分の異常(子宮因子)
妊娠のプロセスに異常をきたしている状態なのです。どこか一つでも異常があると妊娠しづらい状態です。「妊娠しないな……」と不安に思ったら、早めに不妊専門クリニックで検査を受けましょう。
男性の不妊原因とは
男性側の不妊原因は大きく4つに分けられます。
・造精機能障害
健康な精子を作る機能に問題があることです。精子が健康でなければ、腟内で射精された後に卵子までたどり着けないため妊娠の確率が下がったり、受精ができなかったりします。
男性不妊の多くは、この造精機能障害が原因です。精子が健康かどうかは、精液量や濃度、精子の数や運動率、そして正常形態率など複数の項目から判断します。造精機能障害の原因は、精巣の周りに静脈の瘤(こぶ)ができる「精索静脈瘤(せいさくじょうみゃくりゅう)」が挙げられますが、原因が不明なこともよくあります。
・精路通過障害
精子の通り道(「精管」)などに問題があることを指します。具体的には、精液に含まれる精子の数が少ない、もしくは全く含まれていない状態です。「自分は射精できているから大丈夫だろう」と思う方がいるかもしれませんが、精液そのものは出るため見た目では判断できません。
・逆行性射精
精液が尿道ではなく膀胱側に逆流し、うまく射精できないことを「逆行性射精」と言います。精液と精子は射精後の尿に混じって排泄されます。原因としては、前立腺肥大症に対する前立腺手術が挙げられます。その他、糖尿病、脊髄損傷、特定の薬、一部の手術(腹部や骨盤内の大きな手術など)なども原因として考えられます。
・その他
勃起障害(ED)や膣内射精障害(遅漏)など、膣内での射精をうまく行えない状態も不妊の原因です。
男性の不妊原因は主に「精子」に問題があります。検査は不妊専門クリニックや泌尿器科で受けられます。
不妊かどうかを知るにはクリニックで検査を
不妊原因を確かめるには、検査を受けることが大切です。
不妊検査を受けられるクリニックは、インターネットで「不妊検査 〇〇(住んでいる地域名)」と検索すれば出てきます。産婦人科でも検査を受けられることはありますが、詳しく検査をしてもらうために不妊専門クリニックをおすすめします。
また、男性の中には不妊専門クリニックに心理的なハードルを感じる方がいるかもしれません。精液検査は泌尿器科でも受けられるところがあります。お近くの泌尿器科に問い合わせてみてください。
不妊治療を経験した夫婦は5.5組に1組もいる
なかなか妊娠せずに悩む夫婦はたくさんいます。2015年の調査(*1)によると「不妊を心配をしたことがある(または現在している)夫婦」の割合は35%、そして「不妊の検査や治療を受けたことがある(または現在受けている)夫婦」は18.2%という結果が出ています。
つまり3組に1組は子供ができずに心配し、5.5組に1組は不妊検査や不妊治療の経験があるということです。
「不妊治療」と聞くと、ハードルを感じる方が多いかもしれません。しかし、実は多くの夫婦が医療を活用して子どもを授かっています。妊娠しない期間が続くようであれば、勇気を出して夫婦で検査を受けてみてください。