妊活をはじめてしばらく経っても妊娠しないと不安ですよね。「不妊」という言葉が頭をよぎる方もいるかもしれません。この記事では、なかなか妊娠しなくて悩んだときにチェックしたいポイントをまとめて紹介します。
この記事の監修医師
産婦人科専門医 月花瑶子
北里大学医学部卒業。日本赤十字社医療センター、愛育病院での勤務を経て、現在は都内の不妊専門クリニックに勤務。産婦人科専門医の資格を持つ。臨床医として働きながら、生殖に関わるヘルスケアの知識を社会に広める啓蒙活動も行う。監修書籍「やさしく 正しい 妊活大事典」(プレジデント社)
なかなか妊娠せずに悩む夫婦はたくさんいる
3人に1人は不妊を心配をしたことがある
妊活をはじめてから数ヶ月経っても妊娠しないと、「もしかして、私って不妊……?」と不安になりますよね。
実は、妊娠せずに悩む夫婦はたくさんいます。3組に1組は子供ができないことを心配し、5.5組に1組は不妊検査や不妊治療の経験があるのです。2015年の調査によると、子どもがなかなかできず「不妊を心配をしたことがある(または現在している)夫婦」の割合は35%、「不妊の検査や治療を受けたことがある(または現在受けている)夫婦」は18.2%という結果が出ています(*1)。
そもそも「不妊症」とはどのような状態のことを指すのでしょうか。日本産婦人科学会は「妊娠を望む健康な男女が避妊をしないで性交(セックス)をしているにもかかわらず一定期間妊娠しない状態」と定義しており、「一定期間」は「1年間が一般的」と説明されています(*2)。
注意が必要な点は、定義にしたがって妊活を1年間以上してからでないと不妊治療が受けられないわけではありません。不妊治療はカップルの年齢や不妊の原因、ライフプランに合わせて行います。
妊娠しないときにチェックしたい11のポイント
妊娠しないときに確かめたいチェックポイント
不妊の原因があるかどうかは、不妊専門クリニックで検査をする必要があります。とはいえ、いきなり検査に行くのはハードルが高いと感じる方も多いのではないでしょうか。
そこで、なかなか妊娠しない理由を探るために自分でチェックできるポイントを紹介します。
【男女で確かめたいポイント】
1)性交の「タイミング」は正しいか
【女性が確かめたいポイント】
2)基礎体温が低温相と高温相の2相に分かれているか
3)排卵検査薬は陰性から陽性へと変化しているか
4)生理(月経)は正常か
5)性感染症にかかったことはないか
6)子宮・卵巣・卵管や腹部の手術を受けたことがないか
7)人工妊娠中絶の手術を何度か受けた経験はあるか
8)過度なストレスを抱えていないか
【男性が確かめたいポイント】
9)成人してからおたふく風邪にかかったことはないか
10)生殖器に炎症を起こしたことはないか
11)不健康な生活習慣がないか
では、これらのチェックポイントについて一つずつ説明します。
男女で確かめたいポイント
(1)性交の「タイミング」は正しいか
避妊をしていなくても、適切なタイミングで性交しないと妊娠はできません。研究(*3)によると、妊娠しやすいタイミングは排卵日の2日前だということが分かっています。妊娠しやすいタイミングを狙って性交をすることが大切です。排卵日を予測するには、基礎体温の変化を記録する方法や、「排卵検査薬」という薬品を使用する方法があります。基礎体温を測り、排卵検査薬も使って性交のタイミングをはかっていても半年以上妊娠しない場合は、不妊の原因があるかもしれません。
女性が確かめたいポイント
(2)基礎体温が低温相と高温相の2相に分かれているか
卵巣や子宮内膜に働きかける女性ホルモンが正常に分泌されていれば、基礎体温は低温相と高温相の2つの相に分かれます。もし、基礎体温をきちんと計測しているにもかかわらずグラフに変化がないなら、卵子が排卵されていない可能性が考えられます。
また、低温相と高温相の差が0.3℃以下であったり、高温相の期間が10日以下しかない、高温相の期間中に体温が下がったりする場合にも、妊娠するために必要な女性ホルモンの働きが不十分かもしれません。
(3)排卵検査薬は陰性から陽性へと変化しているか
排卵検査薬とは、排卵の直前に分泌が増えるホルモンである「黄体化ホルモン(LH)」を検知するものです。通常は排卵日の数日前に検査薬の判定結果が陰性から陽性へと変化します。もし、判定結果がずっと陰性のまま、もしくは陽性のままだという方は、黄体化ホルモン(LH)の分泌に異常があると考えられます。例えば「多嚢胞性卵巣症候群」という疾患を発症していると、卵胞が発育するのに時間がかかってなかなか排卵せず、黄体化ホルモン(LH)の分泌が増えることで常に陽性の判定が出る可能性が高いです。
(4)生理(月経)は正常か
「正常な生理」とは以下のような状態のことを指します(*4)。以下に当てはまらない項目がある場合には、子宮の病気やホルモン分泌の異常などが考えられ、不妊の原因になりえます。
・周期日数:25日〜38日(平均28日)
・周期ごとの日数変動:6日以内 (※)
・出血する期間:3日〜7日間(平均5日間)
・生理期間中に出る経血の総量:20ml~140ml(平均50ml)
また、生理痛(月経痛)がひどい場合は「子宮内膜症」という疾患の疑いがあり、これも不妊の原因のひとつです。
(5)性感染症にかかったことはないか
性感染症を放置していると、子宮や卵管に炎症を起こすことがあります。特に、クラミジア感染症は感染しても無自覚なことが多いので注意が必要です。、女性は性感染症によって「卵管閉塞」という卵子が卵管を通れない状態になることもあり、これは不妊をひきおこす原因のひとつです。
(6)子宮・卵巣・卵管や腹部の手術を受けたことがないか
子宮や卵巣・卵管、また腹部の腸にまつわる手術の経験がある方は少し注意したいところです。例えば、卵巣のう腫を摘出していると妊娠に必要な卵巣機能が低下することがあります。また、下腹部の手術を行ったことがあると、腹腔(ふっくう)内で臓器同士が部分的に癒着(ゆちゃく)することがあり、これが原因で卵子の通り道である卵管が塞がってしまう「卵管閉塞」を起こしている可能性があります。このように、妊娠に関わる器官や腹部の手術経験があると、不妊の原因となっている可能性があります。
(7)人工妊娠中絶の手術を何度か受けた経験はあるか
中絶手術によって必ず不妊になるわけではありませんが、中絶手術を繰り返し行ったことがあると着床のために大切な子宮内膜が薄くなり、不妊の原因となることがあります。
(8)過度なストレスを抱えていないか
大きなストレスを抱えていると、女性ホルモンが正常に分泌されないことがあります。それが原因で生理周期が乱れたり、そもそも排卵が起こらなかったり、妊娠に必要な機能が正常に働かないことがあります。
男性が確かめたいポイント
(9)成人してからおたふく風邪にかかったことはないか
成人してからおたふく風邪にかかると、睾丸が腫れて激しい痛みを伴う「急性精巣炎」の症状が出る方がいます。その後遺症として、無精子症(精液に精子が含まれていない状態)や乏精子症(精子の量が少なくなる症状)になることがあります。
(10)生殖器に炎症を起こしたことはないか
結核菌や淋菌、クラミジアなどの細菌によって生殖器(陰茎)や副性器(精嚢や前立腺)に炎症が生じたことがある場合には、精子の通過障害(精子の通り道である精管を精子が通過できない症状)や無精子症になることがあります。
(11)不健康な生活習慣がないか
精子の健康は、私生活の乱れに影響を受けます。タバコや多量のアルコール摂取、寝不足などは精子の運動率などを低下させます。女性がいくら健康な生活を心がけていても、精子も健康でなければ受精できません。妊活をはじめたら、男性も健康な生活を心がけることが大切です。
ここまで、なかなか妊娠しないときにチェックすべきポイントを紹介しました。ただし「これらに心当たりがないから安心」というわけではありません。しばらく妊活を続けているにも関わらず妊娠しないのであれば、不妊専門クリニックや産婦人科で検査を受けましょう。
不妊の原因は女性だけでなく男性にもある
約半数は男性にも原因がある
検査は、なるべく男女二人で受けるようにしてください。不妊症の原因は女性だけでなく、男性にもあります。WHOが発表した「不妊症の夫婦のうちどちらに原因があるか」というデータは以下のとおりで、約半数は男性にも原因があります。
男性側に不妊原因があるにもかかわらず、女性だけが検査で「異常なし」と判定されると、妊娠しない原因が分からないまま妊活を続けることになります。
妊娠にはタイムリミットもありますから、時間を無駄にしないためにも男女揃って検査を受けることをおすすめします。
不妊検査を受けるには
不妊検査を受けられるクリニックは、インターネットで「不妊検査 〇〇(住んでいる地域名)」と検索すれば出てきます。産婦人科病院でも検査を受けられることはありますが、詳しく検査をしてもらうためには不妊専門クリニックで検査を受けることを勧めます。
また、男性の中には不妊専門クリニックに心理的なハードルを感じる方もいるかもしれません。精液検査は泌尿器科でも受けられるところがあるので、お近くの泌尿器科にお問い合わせください。
なかなか妊娠しない期間が続くと、とても不安になりますよね。この記事のチェックポイントを確認して、不妊の心当たりがあればクリニックで検査を受けましょう。妊娠に向けて、夫婦二人で頑張ってくださいね。