基礎体温を測り始めたものの、グラフの形が見本通り「低温期」「高温期」に分かれずガタガタ……と悩む方は少なくありません。この記事では、自分の基礎体温グラフが問題かチェックするポイントや、基礎体温グラフが乱れる原因を解説します。
この記事の監修医師
産婦人科専門医 月花瑶子
北里大学医学部卒業。日本赤十字社医療センター、愛育病院での勤務を経て、現在は都内の不妊専門クリニックに勤務。産婦人科専門医の資格を持つ。臨床医として働きながら、生殖に関わるヘルスケアの知識を社会に広める啓蒙活動も行う。監修書籍「やさしく 正しい 妊活大事典」(プレジデント社)
ガタガタでも問題ない?チェックすべき4つのポイント
まずはざっくりと基礎体温の変化を捉えることが大切
基礎体温が「低温期」と「高温期」にきれいに分かれずに悩む方は少なくありません。医学的には低温期と高温期のことを「低温相」と「高温相」とも呼び、基礎体温が分かれることを「2相性を示す」と言います。
とはいえ、見本として示されるグラフの形は理想的なものです。実際のところ、基礎体温がきれいな2相に分かれずガタガタしているように見えることは多々あります。
基礎体温はちょっとした睡眠環境や体調の変化に影響を受けますし、毎日正確に測り続けるのも難しいためです。ちょっとした変化には神経質にならず、ざっくりと基礎体温の変化を捉えることが大切です。
以下では、基礎体温がガタガタしていても「正常な基礎体温」なのかどうかを判断できる4つのポイントを説明します。
ガタガタでも問題ない?正常な基礎体温グラフの形は?
基礎体温をチェックするポイントは以下の通りです。ご自身の基礎体温グラフと照らし合わせてみてください。
<4つのチェックポイント>(*1)
(1)高温相と低温相の差が0.3℃ある
(2)高温相が10日以上続く
(3)高温相の途中で基礎体温が大きく下がらない
(4)低温相から高温相に移る期間が3日以内である
具体的に、以下の図にあるポイントを満たしているかを確認してみましょう。
自分で測った基礎体温のグラフは、上の図よりもガタガタとしているかもしれません。先ほどもお伝えしたとおり、基礎体温は睡眠環境や四季の変化、前日の生活環境やアルコール摂取など、わずかな状況の変化に影響を受けます。
生理周期全体(約1ヶ月間)の基礎体温の変化を見たときに、ざっくりと低温相と高温相の2相に分かれていて、紹介した4つのチェックポイントを満たしていれば問題ないでしょう。
基礎体温がガタガタなときに疑う症状
ガタガタしているように見える「黄体機能不全」
・低温相と高温相の差が0.3℃よりも小さい
・高温相の期間が短い
・途中で体温が下がる
など、グラフが不安定な場合は「黄体機能不全」と呼ばれるプロゲステロン(黄体ホルモン)の働きが十分でない症状が疑われます。黄体機能不全の場合、低温相と高温相の差が小さかったり、また高温相の途中で体温が下がったりするため、「基礎体温のグラフがガタガタしている」と感じるかもしれません。
基礎体温は排卵のタイミングを境に低温相から高温相へと変化します。これは、卵巣内で卵子を包んでいた卵胞が「黄体」という物質に変化して「プロゲステロン(黄体ホルモン)」を分泌し、それが基礎体温を上昇させるからです。その働きがうまくいっていないことが考えられます。
プロゲステロンは受精卵が着床できるように子宮内膜の状態を整える役割を持っているため、黄体機能不全は不妊に繋がります。妊娠を望んでいるのであれば、早めに不妊専門クリニックや産婦人科へ相談してください。ホルモン剤などによって治療ができます。
グラフに変化がない場合は「無排卵周期症」の可能性もある
基礎体温の変化がほとんどなく生理周期を通して1相性(変化があっても小さなガタガタ程度)の方は、排卵が起こっていない「無排卵月経」の可能性があります。このような症状を「無排卵周期症」と呼びます。
無排卵周期症は生理がくるまでに時間がかかったり、または早くきたりと生理不順であることが多いのが症状のひとつです。排卵はしていなくても正常な生理と同じように経血は出るため、無排卵周期症であることに気がつかないケースも多くあります。
しばらく基礎体温を測ってみても2相性にならなければ、無排卵周期症の疑いがあるため医師に相談してください。しばらく経過観察することもあれば、妊娠を望んでいる場合はホルモン剤による治療を行うこともあります。
あらためてチェックしておく基礎体温の測り方
ガタガタしているグラフを見ると心配になるかもしれませんが、そもそも基礎体温を正しく測れていないのかもしれません。最後に、改めて基礎体温の測り方を再確認しましょう。
基礎体温の測り方
基礎体温を正しく測るために、以下の3つのポイントに気をつけましょう。
(1)目覚めた直後、立ち上がる前に計測する
基礎体温は「生命を維持するため、必要最低限のエネルギーしか消費していないとき」の体温です。そのため、計測に適しているのは「目覚めた直後」です。婦人体温計をベッドや布団の横に置いてから寝るようにし、目覚めたら立ち上がる前に計測してください。計測前はトイレに行ったり、水を飲んだりしないようにしてください。
(2)毎日同じ時刻・同じ環境で計測する
基礎体温の変化を正確に記録するためにも、なるべく毎日、同じ時刻に計測しましょう。基礎体温は一日のサイクルの中で計測する時間帯によっても変化しますし、体調や睡眠環境も基礎体温に影響を与えます。
例えば、夜中に目が覚めて水を飲む、寝ている間に布団がはだけて身体が冷える、前日にたくさん飲酒するなどの変化は基礎体温に影響を与えます。
(3)十分な睡眠を取る(4〜5時間以上)
基礎体温を測るときには、睡眠を十分にとることを心がけてください。基礎体温は、十分な睡眠をとった安静な状態でないと正確に測れません。ですから、なかなか寝付けずに睡眠不足なときに計測すると、基礎体温に影響がある場合があります。
詳しくは「【排卵日予測】基礎体温の測り方とグラフの見方を丁寧に解説」でも解説しています。併せてご覧ください。
以上、基礎体温のグラフがガタガタなときにチェックするポイントを解説しました。基礎体温はちょっとした変化に影響を受けるため、見本のように綺麗なグラフにはならないことが多いものです。過度に心配をする必要はありません。
ただし、今回ご紹介した正常な基礎体温グラフの「4つのチェックポイント」に当てはまらない場合には、黄体機能不全や無排卵周期症の疑いもあるため、もし妊娠を望む場合は早めに医師に相談しましょう。