生理中や生理後、めまいや立ちくらみなど「貧血」に悩む方も多いですよね。生理にともなう貧血の多くは鉄分不足による「鉄欠乏性貧血」であることがほとんどです。しかし、なかには病気が隠れている貧血もあるため「ただの鉄分不足だろう」と軽く考えるのは禁物です。この記事では、生理前後に起こる貧血の原因や対処法について解説します。
この記事の監修医師
産婦人科専門医 月花瑶子
北里大学医学部卒業。日本赤十字社医療センター、愛育病院での勤務を経て、現在は都内の不妊専門クリニックに勤務。産婦人科専門医の資格を持つ。臨床医として働きながら、生殖に関わるヘルスケアの知識を社会に広める啓蒙活動も行う。監修書籍「やさしく 正しい 妊活大事典」(プレジデント社)
生理による貧血「鉄欠乏性貧血」の原因
生理によって女性は貧血になりやすい
女性は生理によって体内の鉄分が失われるため貧血になりやすく、女性に起こる貧血の約70%は「鉄欠乏性貧血」だと言われています。これは名前からも想像がつく通り、生理によって体内の血液を失い鉄分が不足することによって起こる貧血です。
約7割の人が生理のときに貧血になったことがある
Coyoliの調査でも、72%と約7割の人が生理のときに貧血になったことがあると回答しました。また、毎回のように貧血で悩む人は19%と約5人に1人の割合でした。
貧血になる仕組み
貧血とは、血液の中にある赤血球の成分「ヘモグロビン」が不足している状態のことを言います。ヘモグロビンは酸素を運ぶ役割を持ち、血液とともに酸素を身体のすみずみまで運ぶことで人は活動ができています。
ヘモグロビンは鉄分を材料に作られているため、生理によって鉄分が不足するとヘモグロビンが十分に作られず身体が酸素不足な状態になり、めまいや立ちくらみなど「貧血」の症状がでます。
貧血の症状
貧血になると以下のような症状がみられます。
・めまいや立ちくらみ
・動悸や息切れ
・身体がだるい、疲れやすい
・まぶたの裏が白い
・爪の真ん中がへこんだり、薄く割れやすい
・無性に氷が食べたくなる
これらの症状に心当たりがあれば、貧血の可能性があります。
生理中の貧血への対処法
生理中の貧血対策には「鉄分」が大切
貧血を防ぐには、食事で鉄分をとることが大切です。鉄分は以下のような食材に多く含まれています。
【鉄分を多く含む食材の例】
・豚や鶏、牛のレバー、牛ヒレ肉
・イワシやカツオ
・赤貝やカキ、あさり
・がんもどき、納豆
・小松菜、ほうれん草
鉄には、肉類や魚介類などの動物性たんぱく質に含まれている「ヘム鉄」と大豆製品や青菜に含まれている「非ヘム鉄」の2種類があります。ヘム鉄のほうが非ヘム鉄に比べて吸収がよいので、積極的に取り入れましょう。
また、たんぱく質は赤血球の成分「ヘモグロビン」の材料となる栄養素ですので、鉄と同様に大切です。貧血中は肉や卵などタンパク質を含む食材をしっかり食べるようにしてください。
鉄分の吸収を助けるビタミンCを一緒にとろう
鉄分は身体に吸収されにくい成分なので、鉄分の吸収を助けるビタミンCを多く含む野菜や果物を一緒に食べるとさらに良いでしょう。
【ビタミンCを多く含む食材の例】
・アセロラジュースやレモン、オレンジ
・ブロッコリーや黄パプリカ、かぼちゃ、青ピーマン
普段の食事だけでは摂取が難しいのであれば、サプリメントを飲むもの一つの手です。
鉄分の吸収を妨げる食べ物には要注意
一方で鉄分の吸収を妨げる食べ物もあります。貧血気味だと思う方は、以下のような食事は適度な摂取を心がけましょう。
【食べ過ぎはよくない食材の例】
・玄米
・ライ麦
・緑茶
・コーヒー
・紅茶
生理の経血量が多いときは要注意
経血量の多いと病気が隠れていることも
貧血の症状が見られる際に気をつけたいのは、生理の経血量です。生理のときに出る血(経血)の量が多く、貧血の症状が出ている場合は、病気の疑いもあります。
例えば、子宮筋腫や子宮腺筋症を患っていると、経血量が多くなる「過多月経」という症状が出ることがあります。
「経血量が多い」の目安としては生理ナプキンを1〜2時間おきに替えないといけない程度だと思ってください。
子宮筋腫や子宮腺筋症などの病気がある場合は早めに治療を行わないと、貧血だけでなく不妊の原因にもなりえます。もし、経血の量が多いと思ったら、早めに婦人科に相談に行きましょう。
生理以外で貧血になる原因
十分に鉄分を摂取できていない食生活
ダイエットや偏食、欠食によって十分に鉄分を摂取できていないと貧血になります。野菜中心の食事は健康そうに見えますが、鉄分を多く含む肉や魚を摂取できずに貧血を引き起こすことがあります。
思春期や妊娠中、授乳期などの身体の変化
思春期にあたる女性は身体の成長によって必要な血液量が増えるため、より多くの鉄分が必要になります。
また、妊娠中は胎児の成長のため、授乳期は母乳のために鉄分が多く必要となり鉄分不足になることがあります。
こうした身体の変化によって鉄分不足になり貧血になることもあります。症状でお悩みの場合は、医師に相談するようにしましょう。
以上、生理と貧血の関係について、そして対処法や気をつけたい症状を解説しました。
貧血がなかなか改善されず、毎月のようにめまいや立ちくらみで悩んだり、先程お伝えしたように経血の量が多いのであれば、早めに婦人科で検査を受けましょう。
病院では、血液検査で血中の赤血球数やヘモグロビン濃度を調べたり、子宮の病気がないかを調べたりします。貧血の症状を改善するためのアドバイスも受けられるので、気軽に婦人科へ相談してみてくださいね。