初体験(はじめての性行為)を迎えるのは、ドキドキする一方で、いろいろ不安もあるかと思います。初体験は痛いという噂を聞いたり、「処女膜が破れて血が出る」なんて聞いたりすると、少し怖いかもしれません。この記事では少しでも安心して幸せな初体験を迎えられるように、初体験は痛いのか、また処女膜とはなんなのか調査結果や医学的な知識をもとに説明します。
この記事の監修医師
産婦人科専門医 月花瑶子
北里大学医学部卒業。日本赤十字社医療センター、愛育病院での勤務を経て、現在は都内の不妊専門クリニックに勤務。産婦人科専門医の資格を持つ。臨床医として働きながら、生殖に関わるヘルスケアの知識を社会に広める啓蒙活動も行う。監修書籍「やさしく 正しい 妊活大事典」(プレジデント社)
初体験は痛い?
痛い人もいれば、痛くない人もいる
初体験のときに痛みを感じたかどうか、それは人それぞれです。とても痛くて男性器を膣にいれようとできなかった、という人もいれば、とくに痛みは感じなかった、という人もいます。
これは、処女膜の状態や性行為をするときに身体の準備が整っていたかどうかによって変わります。
処女膜ってなに?
処女膜はドーナツのような形をしている
「処女膜」と聞くと、膣(ちつ)をふさぐように膜がはっていると勘違いする人も多いのですが、そんなことはありません。膣をふさいでいたとしたら、生理のときの経血やおりものは出てこれないですよね。
処女膜は膣(ちつ)を完全にふさいでいる膜というわけではなく、ドーナツのように穴のあいた形です。リング状の「ひだ」のような形で膣の入り口から1~2cmぐらい位置にあります。主に初体験をきっかけに処女膜は伸びる、または亀裂(きれつ)が入るように破れます。
処女膜の状態は人それぞれ
処女膜の状態は人それぞれです。先ほど「ドーナツのように穴のあいた形」と説明しましたが、穴が小さい人もいれば、また膜が固くて伸びづらい人もいます。人よりも穴が小さかったり、膜が固くて伸びづらい場合は、特に性行為で痛みを感じやすいです。
血が出る人もいれば、でない人もいる
「初体験は血が出る」と聞いたことがあるかもしれませんが、これも人によります。処女膜の状態は人それぞれで、はじめからスムーズに男性器を挿入できる人もいれば、挿入するときに処女膜が破れて出血する人もいます。
「出血しなかったら処女ではない」なんてことを信じている人もたまに見かけますが、それは全くのデタラメです。血が出たとしても、出なかったとしても、気にしないでください。
膣が十分にうるおっていないと痛みを感じやすい
膣がうるおっていないと痛い
初体験が痛い主な原因は処女膜が破れることによるものですが、膣(ちつ)が十分にうるおっていないのも痛みを感じる原因です。男性器を挿入する前に、ハグやキスなど、お互いの身体の準備が整うようにスキンシップをとることは大切です。
スキンシップを取っているうちに、膣(ちつ)の中は少しずつ水分が分泌されてうるおってきます。これは、男性器が挿入されるときに摩擦で膣の内側が傷つかないようにするための身体の仕組みです。
十分にうるおっていないまま男性器が挿入されると、摩擦で痛みを感じます。男性器を挿入する前には、まずは膣が十分にうるおっているかどうかチェックしましょう
知っておきたい初体験のための準備
大切にすべき「性的同意」
初体験を迎えるまえに、必ず知っておいてほしいのは「性的同意(せいてきどうい)」です(*1)。
「性的同意」とは、お互いに性行為をしたいと思っているのか確認することです。相手が嫌がっているにもかかわらず性行為をすることは「レイプ」と呼び、それは犯罪です。
必ず、お互いに心から性行為をしたいと思えているのか、嫌な気持ちはないのか確認するようにしましょう。
無理に焦らない
調査によれば初体験の平均年齢は20.3歳だそうです(*2)。
ただし、これはあくまで「平均」であって、初体験を済ますべき年齢なんてものはありません。
周りの友達が初体験を済ましていると「自分も早くしなきゃ」と焦る人もいるかもしれませんが、あくまで自分の気持ちを大切にしてください。
安心できる場所でする
初体験を迎える場所は人それぞれですが、多いのは「相手の部屋」や「ホテル」でしょうか。場所選びで大切なことは、お互いに安心してリラックスできる場所であることです。
精神的にリラックスできていないと、膣がうるおいにくくなって痛みを感じやすいことがあります。
コンドームを必ず用意する
妊娠を望んでいないのであれば、必ずコンドームを使ってください。
以下は、避妊に関する誤解です。
・コンドームをつけなくても、射精を膣の外ですれば大丈夫
・射精する直前にコンドームを付ければ大丈夫
・コンドームを付ければ100%妊娠しない
コンドームをつけずに射精を膣の外でする「膣外射精」をすれば大丈夫と思っている人が多いのですが、これは間違いです。膣外射精の妊娠率は22%と言われています(*3)。
また、「射精する直前にコンドームを付ければ大丈夫」も誤解です。射精前でも、男性器から精子が漏れて出てきていることがあります。
ちなみに、コンドームをつけていても、途中で外れたり、破れたりする可能性を考えると100%妊娠しないわけではありません。安全に性行為をするためにも、きっちりと正しい方法でコンドームをつけるようにしてください。
相手を思いやる
相手の大切な身体に触れる行為だからこそ、思いやりを持ったコミュニケーションを取りましょう。
相手が嫌がることをしていないか、痛がっていないか、聞いてあげながらスキンシップをとると幸せな初体験が迎えられると思います。
よくAV(アダルトビデオ)では男性側がリードして、女性側は全て受け入れるようなシーンがあったりしますが、あれはあくまでフィクションで、男性向けのAVは「男性が興奮するために作られたもの」です。
AVでは膣内に指を入れて激しく動かすようなシーンもありますが、あれを初体験のときにされて気持ち良いと感じる女性はほとんどいないかと思います。
初体験を迎えるときは、自分や相手に性行為の経験があるのかないのか、また、どのように身体に触れて欲しいのか、コミュニケーションを取るとよいでしょう。
初体験で痛みを感じないようにする工夫
お互いにリラックスする
緊張や不安が大きいと、腟がうるおいにくかったり、精神的なものが原因で痛みを感じやすくなったりします。
お互いにコミュニケーションをちゃんと取りながら、ゆっくりリラックスしてスキンシップを取りましょう。
焦らずゆっくりと
AVなどでは激しい動きをするシーンも多いですが、初体験の時からあのような動きで気持ちがいいと感じる人は少ないと思います。
ましてや、処女膜もあるような状態ではなかなかスムーズには挿入ができないことが多いです。
最初は、焦らずゆっくりとスキンシップを取りましょう。
我慢しない
痛みを感じたとき、我慢をしないことが大切です。「痛い」ということを伝えないと、相手も分からず動きを止められまん。
「痛いから、ちょっと止まって」、「痛いから、ゆっくりして」、また「痛いから、また今度チャレンジさせて」と、相手に伝えることが大切です。
以上、初体験は痛いのか、また痛みをやわらげるための工夫について説明しました。そうは言っても痛い人は痛いので、最初はあまり無理をせずに、ゆっくりとステップを踏んでいくのが良いかと思います。お互いに思いやりをもって、スキンシップをとるようにしてくださいね。